刑法(凶器準備集合・結集罪)

凶器準備集合・結集罪(12) ~ 凶器準備集合罪⑪「『目的とする共同加害行為』と『集合』との時間的、場所的関係が密接でなくても凶器準備集合罪は成立する」を説明

 前回の記事の続きです。

 凶器準備集合罪は、刑法208条の2第1項で、

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 この記事では、条文中にある「集合」に関し、

  • 「目的とする共同加害行為」と「集合」との時間的、場所的関係が密接でなくても凶器準備集合罪は成立する

ことについて説明します。

「目的とする共同加害行為」と「集合」との時間的、場所的関係が密接でなくても凶器準備集合罪は成立する

 凶器準備集合罪の成立を認めるに当たり、「目的とする共同加害行為」と「集合」との時間的、場所的関係が密接でなければならないものではありません。

 この点、参考となる以下の裁判例があります。

大阪高裁判決(昭和54年10月30日)

 弁護人が、

  • 刑法208条の2第1項の「ニ人以上の者の集合」について、目的とする共同加害行為と集合との時間的、場所的関係が密接で、右法益侵害に対して直接的な現実的ないし具体的危険性が認められる範囲内におさまっていなければ、本罪にいう「集合」にあたるとはいえない

と主張したのに対し、裁判所は、

  • 刑法208条の2第1項の凶器準備集合罪は、個人の生命、身体、財産のみならず、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものと解すべきである(最高裁判所昭和45年12月3日第一小法廷決定・刑集24巻13号1707頁)目的とする共同加害行為と集合との時間的、場所的関係についての所論(※弁護人の主張)も、それが個人的法益侵害の面のみを対象とする主張である限り(論旨(※弁護人の主張)は、そのような主張であると解される)、失当といわざるを得ない

と判示し、弁護人の上記主張は失投であるとしました。

東京高裁判決(昭和48年4月24日)

 静岡県伊東市で開催されるアジア太平洋協議会の阻止に向う過激派集団に対し、

  • 共同加害の目的を持つ集団が、目的地に向うため電車に乗車し、その乗車駅で縄で束ねられた角材を車内に搬入し、進行中の車内でその縄を解き角材を各自に手渡し必要に応じていつでも加害行為にこれを使用しうる状態においたときは、その時点において兇器準備集合罪が成立する

と判示し、同協議会に向かう途中である静岡駅、小田原駅、辻堂駅などの場所で凶器準備集合罪が成立するとしました。

水戸地裁判決(昭和45年1月30日)

 東京都内の警察署を襲撃する目的で火炎びんを運搬する途中、水戸駅における凶器準備集合罪の成立を認めました。

東京高裁判決(昭和46年1月28日)

 翌月に予定されていた首相訪米阻止のため首相官邸襲撃の訓練のために山梨県山中に集合した者に対し、

  • 予定された襲撃に出る際は、一旦ばらばらになって行動する予定であったとしても、その間も凶器準備集合の状態が継続する

とし、凶器準備集合罪の成立を認めました。

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