刑法(凶器準備集合・結集罪)

凶器準備集合・結集罪(15) ~ 凶器準備結集罪②「『凶器準備結集罪』と『凶器準備集合罪の教唆』との関係」を説明

 前回の記事の続きです。

「凶器準備結集罪」と「凶器準備集合罪の教唆」との関係

 凶器準備結集罪(刑法208条2第2項)は、凶器準備集合罪(刑法208条2第1項)の教唆と大部分において重なり合いますが、全く同一ではありません。

 凶器を準備し、又は準備のあることを知って人を集合させれば、集合者が凶器の準備を知らずに集合した場合でも「凶器準備結集罪」は成立しますが、「凶器準備集合罪の教唆」は成立しません。

 逆に、凶器を準備して集合すべきことを人に決意させても、自ら「集合させる」のでなければ、「凶器準備集合罪の教唆」は成立しても、「凶器準備結集罪」は成立しません。

 凶器準備結集罪は、凶器準備集合の状態を積極的・主導的に作り出す点に凶器準備集合罪より重く朋罰せられる根拠があると解されるので、

凶器準備集合の状態を形成するにつき主導的な役割を担うものが凶器準備結集罪に当たる

というべきとされます。

 そこで、

集合させること、集合体の維持について主導的役割を担う行為の有無

をもって、単純な教唆にとどまるものか、凶器準備結集罪に当たるものかを決すべきこととなります。

 したがって、結集とは、単に人を集合体に参加させるだけでは足りません(東京地裁判決 昭和48年7月3日)。

 これについて、東京地裁判決(昭和50年3月26日)は、謀議に参加し、発言もあったが、犯行の具体的計画についての発言はなく、組織上の地位も明らかでない被告人について、

「凶器準備結集罪における「結集」とは、集合体の形成及び共同加害目的の付与について指導的ないしは積極的な役割を果たすことが必要であるので、謀議における言動等のみでは凶器準備結集罪における「結集」に該当するとはなし難く、凶器準備集合罪の共謀共同正犯の限度で刑責を負わせるのが相当である」

と判示しています。

凶器準備集合罪の教唆に当たるとされた事例

 「凶器準備集合罪の教唆」に当たるとされた事例として、以下の裁判例があります。

東京高裁判決(昭和57年5月20日)

 被告人が「今度、空港関係施設のゲリラ戦がある。集会が9月17日にあるので、その近くでやるから参加してくれないか。休暇を取っておくように。」ど指示したのに対し、相手は、凶器準備集合、放火、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反などの犯罪を含むいわゆるゲリラ戦に加わることを決意して「やりましょう」と答え、その後更に、被告人の「小屋に14日の夜か15日の朝までに行くように」などの指示によって犯行に参加した事案について、凶器準備集合罪の教唆が成立するとしました。

 なお、「凶器準備集合罪の教唆」に当たる行為のうち「凶器準備結集罪」が成立するものについては、教唆犯の規定は適用されないとされます。

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