刑法(未成年者略取・誘拐罪)

未成年者略取・誘拐罪(2) ~「親告罪」「告訴権者」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、未成年者略取罪、未成年者誘拐罪(刑法224条)を「本罪」といって説明します。

親告罪

 本罪及びその未遂罪は親告罪です。

 親告罪とは、

告訴がなければ、犯人を裁判にかけることができない犯罪

をいいます(親告罪の詳しい説明は前の記事参照)。

 本罪が親告罪であることは、刑法229条に規定があり、

第224条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第227条第1項並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない

と規定されます。

告訴権者

 告訴権者は、

  • 被害者
  • 法定代理人

です(刑訴法230条231条)。

 法定代理人である保護監督者(親権者後見人)が告訴できることはもちろんです。

 問題となるのが、法定代理人でない保護監督者も被害者として告訴できるかという点です。

 学説では、肯定説と否定説とに分かれています。

 否定説の根拠として、監護権を略取・誘拐罪の保護法益と解さない立場からは単なる監護者は被害者として告訴権者になり得ないことが挙げられます(本罪の保護法益の説明は前の記事参照)。

 判例・裁判例も見解が分かれており、福岡高裁判決(昭和31年4月14日)は、事実上の監護権を有する監督者について告訴権を認め、一方で、大審院判決(大正7年11月11日)は、監護権のない雇主には告訴権がないとしています。

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