刑法(営利・わいせつ等略取・誘拐罪)

営利・わいせつ等略取・誘拐罪(1) ~「営利・わいせつ目的等略取・誘拐罪とは?」「罪名」「保護法益」「犯罪の種類(継続犯又は状態犯)」「本罪の特別刑法」を説明

 これから8回にわたり、営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪(刑法225条)を説明します。

 この記事では、営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪を「本罪」といって説明します。

営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪とは?

 本罪は、営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で成人又は未成年者を略取・誘拐する行為を処罰する規定であり、刑法225条において、

営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する

と規定されます。

 「成人」に対する場合には、

  • 営利
  • わいせつ
  • 結婚
  • 生命若しくは身体に対する加害

の目的を有することが要件となります(つまり、目的犯となります)。

 これに対して、「未成年者」に対する場合には、

  • 前記目的があれば本罪(刑法225条)によって処罰される
  • 前記目的がなければ前条の未成年者略取・誘拐罪(刑法224条)によって処罰される

ことになります。

 本罪でいう「未成年者」とは、「18歳未満の者」をいいます(民法4条)。

罪名

 営利目的で人を略取した場合は、「営利略取罪」となります。

 営利目的で人を誘拐取した場合は、「営利誘拐罪」となります。

 わいせつ目的で人を略取した場合は、「わいせつ略取罪」となります。

 わいせつ目的で人を誘拐取した場合は、「わいせつ誘拐罪」となります。

 結婚目的で人を略取した場合は、「結婚略取罪」となります。

 結婚目的で人を誘拐取した場合は、「結婚誘拐罪」となります。

 生命若しくは身体に対する加害の目的で人を略取した場合は、「生命身体加害略取罪」となります。

 生命若しくは身体に対する加害の目的で人を誘拐した場合は、「生命身体加害誘拐罪」となります。

保護法益

 本罪の保護法益は、

略取・誘拐された者の自由及び安全

です。

 保護監督者がいる場合には、

保護監督者の監護権

も保護法益と解する見解があります。

犯罪の種類(継続犯又は状態犯)

 本罪について、学説では、継続犯であるとする「継続犯説」と、状態犯であるとする「状態犯説」の2説があります(状態犯と接続犯の説明は前の記事参照)。

 判例・裁判例も、本罪が継続犯である解しているものもれば、状態犯であると解しているものがあります。

本罪に関する特別刑法

 本罪に関する特別刑法として、職業安定法違反(職業安定法63条1号の罪)があります。

 職業安定法63条1号は、

  1. 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者
  2. 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者

に対し、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処するものです。

次の記事へ

略取、誘拐、人身売買の罪の記事一覧