刑法(拐取者身の代金取得・要求罪)

拐取者身の代金取得・要求罪(6) ~「本罪の罪数の考え方」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、拐取者身の代金取得罪、拐取者身の代金要求罪(刑法225条の2第2項)を「本罪」といって説明します。

本罪の罪数の考え方

 本罪は、刑法225条の2第2項に規定があり、

第1項 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は3年以上の懲役に処する

第2項 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする

と規定されます。

 この記事では、本罪の罪数の考え方を説明します。

財物を要求した上、交付させた場合は、包括一罪となる

 本罪について、財物を要求した上(拐取者身の代金要求罪)、交付させた場合(拐取者身の代金取得罪)には、両罪はの包括一罪となります。

 この場合の罪名は、「拐取者身の代金取得罪」となります。

身の代金取得以外の目的で人を略取した者が拐取者身の代金要求罪を犯した場合、両罪は併合罪になる

 身の代金を得る目的以外で(例えば、営利・わいせつ・結婚・生命身体加害の目的で)で人を略取した者が、その後、身の代金を得る目的が生じ、「拐取者身の代金要求罪」(刑法225条の2第2項)を犯した場合は、「営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪」(刑法225条)と「拐取者身の代金要求罪」は併合罪の関係になります。

 この点を判示したのが以下の判例です。

最高裁決定(昭和57年11月29日)

 裁判所は、

  • 営利の目的で人を略取した者がみのしろ金要求罪を犯した場合には、右両罪は、併合罪の関係にある

と判示しました。

身の代金を得る目的で「営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪」を犯し、身の代金を要求した場合、「営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪」と「拐取者身の代金要求罪」は牽連犯になる

 身の代金を得る目的で、「営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪」(刑法225条)を犯し、「拐取者身の代金要求罪」(刑法225条の2第2項)を犯した場合、「営利・わいせつ・結婚・生命身体加害略取・誘拐罪」と「拐取者身の代金要求罪」とは手段と結果の関係にあるので、牽連犯の関係になります。

 この点を判示したのが以下の判例です。

最高裁決定(昭和58年9月27日)

 裁判所は、

  • みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪(刑法225条の2第1項)とみのしろ金要求罪(刑法225条の2第2項)とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にあると解するのが相当である

と判示しました。

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