刑法(人身売買の罪)

人身売買の罪(3) ~「未成年者買受け罪とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、人身売買の罪(刑法226条の2)のうち、第2項の「未成年者買受け罪」を説明します。

未成年者買受け罪とは?

 未成年者買受け罪は、刑法226条の2第2項に規定があり、

未成年者を買い受けた者は、3月以上7年以下の懲役に処する

と規定されます。

 未成年者買受け罪は、未成年者を買い受ける行為について、未成年者保護の観点から、人身買受け罪刑法226条の2第1項)よりも重い未成年者略取・誘拐罪刑法224条)と同じ刑で処罰する規定です。

主体(犯人)

 未成年者買受け罪の主体(犯人)に制限はありません。

客体(被害者)

 未成年者買受け罪の客体(被害者)は、未成年者に限られます。

行為

 未成年者買受け罪の行為は、

未成年者を買い受けること

です。

 客体(被害者)が未成年者であることを除けば、未成年者買受け罪の行為は、人身買受け罪刑法226条の2第1項)と同じです。

共犯

 「未成年者買受け罪」と未成年者を対象とする「人身売渡し罪」(刑法226条の2第4項)とは、必要的共犯の関係に立ち、刑法60条(共犯の規定)の適用を要せず、共に正犯として処罰されます。

実行の着手時期、既遂時期

 未成年者買受け罪の実行の着手の時期は、

未成年者の売買又は交換の申込みをした時点

です。

 未成年者の売買又は交換の申込みがあれば買受け行為の実行の着手があったことになり、この時点で、少なくとも未成年者買受け未遂罪(刑法228条)が成立することになります。

 未成年者買受け罪の既遂時期は、

現実に人身の受渡しがあった時

です。

 この時点で未成年者買受け罪は既遂に達します。

他罪との関係

 「未成年者買受け罪」と未成年者を対象とする「被略取者等所在国外移送罪」(刑法226条の3)との関係については、牽連犯説と併合罪説とに分かれています。

 「未成年者買受け罪」を犯した後に被買者を逮捕・監禁すれば、「未成年者買受け罪」と「逮捕・監禁罪」(刑法220条)は、牽連犯の関係になります。

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