刑法(被略取者引渡し等の罪)

被略取者引渡し等の罪(1) ~「刑法227条の被略取者引渡し等の罪とは?」「刑法227条の罪の罪名」を説明

 これから8回にわたり、刑法227条の被略取者引渡し等の罪について説明します。

刑法227条の被略取者引渡し等の罪とは?

 刑法227条は、

  • 各種の略取・誘拐罪を犯した者を事後的に幇助する行為
  • 略取・誘拐され又は売買された者に対する支配の状態を継続し助長する行為

を罰するものです。

 刑法227条は、

第1項

第224条(未成年者略取及び誘拐)、第225条(営利目的等略取及び誘拐)又は前三条【第226条(所在国外移送目的略取及び誘拐)、第226条の2(人身売買)、第226条の3(被略取者等所在国外移送)】の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、3月以上5年以下の懲役に処する

第2項

第225条の2第1項(身の代金目的略取等)の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、1年以上10年以下の懲役に処する

第3項

営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、6月以上7年以下の懲役に処する

第4項

第225条の2第1項(身の代金目的略取等)の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、2年以上の有期拘禁刑に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする

と規定します。 


 第1項・2項は、事後従犯であり、刑法62条に規定される幇助とは異なります。

 第3項・4項前段は、自分自身が営利、わいせつ又は身の代金取得の目的を持つことを要するものですが、行為は拐取された被害者の収受だけです。

刑法227条の罪の罪名

 刑法227条の第1項から4項までの罪名は、行為の態様に応じ、以下の罪名となります。

刑法227条第1項の罪名

 行為が「引渡し」の場合は、「営利略取等幇助目的被略取者等引渡し罪」となります。

 行為が「収受」の場合は、「営利略取等幇助目的被略取者等収受罪」となります。

 行為が「輸送」の場合は、「営利略取等幇助目的被略取者等輸送罪」となります。

 行為が「蔵匿」の場合は、「営利略取等幇助目的被略取者等蔵匿罪」となります。

 行為が「隠避」の場合は、「営利略取等幇助目的被略取者等隠避罪」となります。

刑法227条第2項の罪名

 行為が「引渡し」の場合は、「身の代金拐取幇助目的被略取者等引渡し罪」となります。

 行為が「収受」の場合は、「身の代金拐取幇助目的被略取者等収受罪」となります。

 行為が「輸送」の場合は、「身の代金拐取幇助目的被略取者等輸送罪」となります。

 行為が「蔵匿」の場合は、「身の代金拐取幇助目的被略取者等蔵匿罪」となります。

 行為が「隠避」の場合は、「身の代金拐取幇助目的被略取者等隠避罪」となります。

刑法227条第3項の罪名

 行為が「引渡し」の場合は、「営利被略取者等引渡し罪」となります。

 行為が「収受」の場合は、「営利被拐取者等収受罪」となります。

 行為が「輸送」の場合は、「営利被拐取者等輸送罪」となります。

 行為が「蔵匿」の場合は、「営利被拐取者等蔵匿罪」となります。

刑法227条第4項前段の罪名

 身の代金の目的で、略取又は誘拐された者を収受した場合は、「身の代金被拐取者収受罪」となります。

刑法227条第4項後段の罪名

 略取され又は誘拐された者を収受した者が、身の代金を要求して取得した場合は、「収受者身の代金取得罪」となります。

 略取され又は誘拐された者を収受した者が、身の代金を要求した場合は(身の代金の要求はしたが、取得はしていない場合)、「収受者身の代金要求罪」となります。

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