刑法(公用文書等毀棄罪)

公用文書等毀棄罪(2) ~「『電磁的記録』とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、公用文書毀棄罪、公電磁的記録毀棄罪(刑法258条)を「本罪」と言って説明します。

「電磁的記録」とは?

 刑法における「電磁的記録」の意義については、刑法7条の2において、

電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう

と定義されています。

 昭和62年の刑法改正により、公用文書毀棄罪の客体に電磁的記録が加えられました。

 刑法改正前は、現代の高度情報化社会において、電磁的記録が文書に代わり、社会的に重要な事項についての証明機能及び情報の記録・保存機能を果たしつつあるのにかかわらず、電磁的記録それ自体には可視性・可読性が認められないことから文書性を認めることができない状態でした。

 そのために文書毀棄罪の対象から電磁的記録が除外されることになっていたので、これを是正して、電磁的記録を毀棄する行為を文書毀棄と同様に処罰するために刑法改正が行われ、公用文書毀棄罪の客体に電磁的記録が加えられました。

電磁的記録の具体例

 本罪の対象となる電磁的記録の例として、

  • 電子情報処理組織による自動車登録ファイル
  • 特許原簿
  • 住民票や運転者管理マスターファイルの記録
  • 法令検索システム等公務所において管理、運営しているデータベースの記録

などが挙げられます。

電磁的記録の永続性の要否

 「電磁的記録」についても「文書」の場合と同様に、記録としてのある程度の永続性を有することが必要であり、通信中のデータや中央処理装置において処理中のデータなどはこれに含まれないと解すべきとなれます。

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