いったん人を信頼すると、「この人は信頼できる人だ」と思ってしまいますが、この認識は正しくありません。
正確には、「この人は現時点で信頼できる人だ」と考えるのが正しい認識です。
なぜなら、人の信頼度レベルは固定されていないからです。
信頼とは、現時点で信頼できるかどうかという前提の下に考えるべきものです。
信頼とは何か?
信頼とは、独力でやっていけないときに必要となるツールです。
信頼は、他者を頼らなくてはならない人にとって、生き延びるための手段になります。
仕事が分からない新入社員は、先輩社員に頼らなければ仕事ができず、会社から追い出されしまいます。
このとき、新入社員は、会社から追い出されないように先輩社員を信頼してついていく選択をします。
逆に、仕事を知っている先輩社員は、独力で社内で生きていけるので、新入社員を信頼して協力関係を組むことは必須ではありません。
他者の協力に頼る必要がない強い立場にいる人にとって、信頼は必要ないのです。
とはいえ、社会で生きていく上で、完全に独力だけで生きていける人はいないので、支え合って生きていくために、程度の差こそあれ、誰かを信頼する必要はあります。
信頼が続かない理由
独力で生きる力がない立場の弱い人は、独力で生きていける強い立場の強い人を信頼して頼る必要があります。
弱い立場の人は、強い立場の人を信頼する必要に迫られて信頼するのです。
新入社員が先輩社員にぺこぺこ頭を下げて、異常なまでに迎合するのはこのためです。
しかし、独力で生きていける強い立場の人にとって、弱い立場の人からの信頼は必ずしも必要なものではありません。
そのため、立場の強い人は、弱い立場の人に信頼されることの利益とコストのバランスがとれなくなったり、寛大さ・公平さ・善意などの道徳心が揺れ動けば、立場の弱い人から寄せられる信頼を無視することができます。
状況によっては、弱い立場の人からの信頼を切り捨てて、協力を失っても構わないのです。
先輩社員は、気に入らない新入社員がいれば、ディスって潰しにかかってもいいわけです。
このように、立場の強い人が信頼関係を維持するかどうかの主導権を握っているため、立場の強いの人の意思決定次第で、既存の信頼関係は変化したり、消えてなくなったりします。
よって、信頼とは、当初の状態を維持したまま続くものではないのです。
信頼をするときは、現時点における信頼という前提に立つことが必要です。