刑法(常習賭博罪)

常習賭博罪(3)~「営業的に賭博を反覆累行することは『常習として』といえるか」を説明

 前回の記事の続きです。

営業的に賭博を反覆累行することは「常習として」といえるか

 常習賭博罪(刑法186条1項)において、営業的に賭博を反覆累行することは「常習として」といえるかについて、これを「肯定する見解」と「否定する見解」に分かれています。

 「肯定する見解」は、

通説・判例において、常習性が「習癖」と理解されていることから、常習性を行為者の習慣や癖といった人格的・性格的傾向の発現というべきものに限定して理解した上、営業的に賭博を反覆累行するとしてもそれは習癖の内容をなすとはいえないとして常習性を否定し、あるいは常習性を肯定することを疑問視する

というものです。

 「否定する見解」は、

経済的理由から賭博行為を継続して行う高い危険性が認められる場合があり、そのような場合を常習賭博罪から除外する合理的な理由はない、あるいは、賭博の常習性は、肉体的、精神的、心理的依存性ばかりでなく、「賭博を容易に止められない」という意味で経済活動上の依存性も含むと解すべきであるなどとして、常習性を肯定する

というものです。

 この点に関し、最高裁(最高裁決定 昭和54年10月26日)は、

  • 長期間営業を継続する意思のもとに、5200万円という多額の資金を投下して賭博遊技機34台を設置した遊技場の営業を開始し、警察による摘発を受けて廃業するまでの3日間、これを継続し、その間延べ約140名の客が来場して合計約70万円の売上利益を挙げた

という事案において、これらの各事情を掲げた上、

  • その他原判示の諸事情に徴すると、被告人に賭博を反覆累行する習癖があり、その発現として賭博をしたと認めるのを妨げない

と判断しています。

 このことから、最高裁は、「習癖」を人格的・性格的傾向に厳格に限定する立場には立たない(「否定する見解」の立場ではない)と考えられていますが、事例判断をしていることから、営業的事犯の全てについて常習性を認めたとまではいい難いとされます。

 したがって、この最高裁判例の立場に立っても、営業開始後直ちに摘発されたような場合に常習性が認められるかといった問題については、なお見解が対立しています。

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