前回の記事の続きです。
常習性の法的性格
常習賭博罪(刑法186条1項)における常習性の法的性格について、
- 行為者の属性(行為者定型)が構成要件化されたものとみる見解
- 行為の属性(行為定型)が構成要件化されたものとみる見解
- 行為者の属性であるとともに行為の属性でもあり、その両者が構成要件化されたとみる見解
があります。
常習賭博罪における「常習性」は「賭博を反覆累行する習癖」と理解されており(詳しくは前の記事参照)、常習性を「習癖」と理解する以上、常習性は責任要素であって、常習性を行為者の属性(行為者定型)とみる「①の見解」のが自然であるとされます。
常習性を行為の属性とみる「②の見解」は、常習賭博罪を単純賭博罪(刑法185条)よりも違法性の高い犯罪定型として捉えようとする考え方といえますが、常習性を「習癖」と理解した上でそのような考え方に至るには、なお一段の説明が必要ではないかという批判的意見があります。
また、行為者の属性とは別に行為定型のみにより常習性が決まるのだとすると、その行為定型に該当する賭博にたまたま1回限り加わった者であっても常習賭博罪を構成することになると考えられ、その結論は行き過ぎであるとされます。
常習性の法的性の見身分犯との関係
この常習性の法的性格に関する考え方により、常習賭博罪を身分犯と解すべきか、身分犯と解した場合、常習者と非常習者の共犯事件について刑法65条1項と同条2項のいずれを適用すべきかといった問題の解決が異なってきます。
この点、判例は、従前から、常習賭博罪における常習性は刑法65条2項の「身分」であり、常習者と非常習者が共犯関係にある場合には犯罪の成立と科刑の両方について刑法65条2項が適用されると解しているので、この判例の立場に立つ限り、法令適用上の差異は生じません。