前回の記事の続きです。
拘禁者に単純逃走又は加重逃走罪が成立する場合は、被拘禁者奪取罪は成立しない
被拘禁者奪取罪(刑法99条)は、被拘禁者の意思がどのようなものであるかにかかわらず成立しますが、
の要件が具備するときは、被拘禁者奪取罪は成立せず、拘禁者に対し、単純逃走又は加重逃走罪が成立します。
被拘禁者奪取罪の教唆犯は成立しない
被拘禁者が第三者を教唆して自己を奪取させた場合、被拘禁者に被拘禁者奪取罪の教唆犯が成立するかという問題があります。
この点については、被拘禁者は、単純逃走罪又は加重逃走罪の正犯としてのみ処罰され、被拘禁者奪取罪の教唆犯は成立しないと解するのが一般です。
その理由として、
- 被拘禁者が逃走罪の主体たり得るものであって、奪取されることが逃走になるという関係にあれば実質的には対向犯に類するものが存在し、逃走罪のみが成立する
- 被拘禁者が逃走の主体たり得ない場合も、これとの均衡上、対向犯に準ずる関係を認め、奪取罪の教唆犯は成立しないと解すべきこと
が挙げられています。