刑法(逃走の罪)

逃走援助罪(2)~「『器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為』とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

「器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為」とは?

 逃走援助罪は、刑法100条に規定があり、

1項 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、3年以下の拘禁刑に処する

2項 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

 逃走援助罪の行為は、

  1. 器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為(1項)
  2. 暴行又は脅迫(2項)

です。

 この記事では、1項の「器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為」を説明します。

「器具を提供」する行為とは?

 「器具を提供」する行為は「逃走を容易にすべき行為」の例示です。

 器具とは、金のこぎり縄ばしご、釘、縄、針金などの被拘禁者の逃走に役立つ道具をいいます。

 具体的状況の下で、被拘禁者の逃走を容易ならしめる性質を有していれば「器具」に当たります。

「逃走を容易にすべき行為」とは?

 「逃走を容易にすべき行為」の意義については一般に、

  • 逃走を容易にさせるような行為であれば足り、
  • その方法は問わず、
  • 言語による場合と動作による場合を含み、
  • 逃走方法の指示、拘束のための器具の解除等がこれに当たる

とされています。

 逃走援助罪は、逃走罪の共犯とされるような行為を独立罪として規定したものであり、逃走の幇助とされるような行為のほか、その教唆とされるような行為をも含むと解されています。

 よって、逃走の意思のない者に逃走の意思を生ぜしめる場合も逃走援助罪に含まれます。

 また、器具の提供、拘束のための器具の解除などの物質的方法により逃走を容易にさせる場合のほか、逃走方法の教示などの精神的方法により逃走を容易にさせる場合でも逃走援助罪が成立し得ると解されています。

 逃走援助罪の裁判例として以下のものがあります。

名古屋高裁金沢支部判決(昭和45年4月14日)

 被告人が逮補された者Aに対し、積極的に逃走を勧めAの逃走心を強固にするとともに、自己に警察職員等の注意を集めてAに逃走の機会を与えたと推認されるとして、逃走援助罪の成立を認めました。

次の記事へ

逃走の罪の記事一覧