前回の記事の続きです。
逃走援助罪における「暴行又は脅迫」とは?
逃走援助罪は、刑法100条に規定があり、
1項 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、3年以下の拘禁刑に処する
2項 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する
と規定されます。
逃走援助罪の行為は、
- 器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為(1項)
- 暴行又は脅迫(2項)
です。
この記事では、2項の「暴行又は脅迫」を説明します。
「暴行又は脅迫」とは?
逃走援助罪における「暴行又は脅迫」行為は、1項にいう「逃走を容易にすべき行為」の一つですが、暴行又は脅迫を手段とする場合を加重類型として2項に規定したものなので、暴行・脅迫は
逃走を容易にさせるべき性質のもの
でなければなりません。
かつ、暴行又は脅迫は、
「逃走させる目的」をもってなされるもの
でなければなりません。
「暴行・脅迫」の意義
逃走援助罪の「暴行・脅迫」は逃走を容易にさせるべき性質のものでなければならないが、必ずしも直接着守者に向けられたものに限る必要はないと考えられています。
また、被拘禁者の逃走を容易にさせる程度のものであることが必要ですが、 またこれで足りると考えられています。
さらに、加重逃走罪(刑法98条)との均衡からして、暴行にはいわゆる対物暴行も含まれると解するのが相当と考えられています。
なお、上記の見解を含み、暴行・脅迫の意義については見解が多数あり、
- 暴行・脅迫は、監視者に対して加えることを要するとする見解
- 看守者に向けられることを要するから直接的である必要はなく、間接的に感応し得るものであればよいとする見解
- 必ずしも看守者に直接向けられたものである必要はなく、拘禁場や器具の損壊等物に対する暴行を含むとする見解
- 暴行は人に対する暴行のみならず物に対する暴行を含むとする見解
- 暴行・脅追は、必ずしも看守者に対してしたのでなくとも、通報を妨げるため同じ被拘禁者に対して、あるいは第三者に対して行うものも含むとする見解
があります。
また、暴行・脅迫の程度については、
- 被拘禁者の逃走を容易ならしめる程度のものであることが必要であるとする見解
- 反抗を抑圧する程度に達している必要はないとする見解
- 奪取罪の行為と同等以上の暴行・脅迫を要件とする見解
があります。