刑法(逃走の罪)

看守者逃走援助罪(2)~「主体(看守又は護送する者)」「客体(法令により拘禁された者)」を説明

 前回の記事の続きです。

主体(看守又は護送する者)

 看守者逃走援助罪は、刑法101条において、

法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、1年以上10年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

1⃣ 看守者逃走援助罪の主体は、「看守又は護送する者」であり、本罪は身分犯です。

 「看守又は護送する者」とは、

被拘禁者を看守又は護送する任務を有する者

をいいます。

2⃣ 本罪の主体は、看守又は護送の任務に従事していれば足り、必ずしも公務員であることを要しません。

(なお、この点については、公務員に限るとする見解もあります)

3⃣ 「看守又は護送の任務」については本務(主たる業務)であることを要しません。

 看守者逃走援助罪は、職務違反という点が重視されて法定刑も重く定められていることからすれば、看守又は護送の任務については、

  • 法令上の根拠に基づくものであることを要する

と解するのが相当とされます。

 この点につき別の見解もあり、

  • 現実に看守又は護送の任務に従事していれば足るとする見解
  • 何らかの理由で看守又は護送の任務に服する者とする見解

があります。

4⃣ 看守、護送の任務は、逃走させる行為時にあれば足ります(通説)。

 この点つき、以下の判例があります。

大審院判決(大正2年5月22日)

 裁判所は、

  • 法令により拘禁せられたる者を看守又は護送する者、その任務に違背し、被拘禁者を逃走せしむるの目的をもって逃走を容易ならしむべき行為を為し、又は逃走を防止すべき行為を為さずしてこれを逃走せしめたるときは、逃走の事実、その看守又は護送の任務解除後に発生するも、なお刑法第101条の罪を構成するものとす

と判示しました。

客体(法令により拘禁された者)

 看守者逃走援助罪の客体は、「法令により拘禁された者」です。

 「法令により拘禁された者」の意義や具体例は、被拘禁者奪取罪(刑法99条)と同じであり、詳しくは被拘禁者奪取罪(2)の記事参照。

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