前回の記事の続きです。
証人が証言した後に宣誓した場合に偽証罪は成立する
偽証罪(刑法169条)の主体(犯人)は、
「法律により宣誓した証人」
です。
偽証罪が成立するためには、証人が宣誓をした上で裁判で虚偽の証言をすることが必要です。
宣誓は、証人としての尋問を受ける前になされるのが原則です(民訴法201条1項、民訴規則112条1項本文、刑訴法154条、刑訴規則117条)。
しかし、例外的に証人としての陳述が終了した後に宣誓することが認められる場合があります。
例えば、民訴規則112条本文は、「証人の宣誓は、尋問の前にさせなければならない」とした上、同条ただし書において「ただし、特別の事由があるときは、尋問の後にさせること ができる」と規定しており、この条文は特許法等において準用されています。
そのため、虚偽の陳述をした後に宣誓がなされることがあり、この場合において「法律に より宣誓した証人」による虚偽の陳述として偽証罪が成立するかどうかが問題となります。
結論として、虚偽の陳述をした後に宣誓がなされた場合でも、偽証罪は成立します。
宣誓することは証人の属性とされており、自己の陳述の真実性を担保するものですが、事前の宣誓であれ事後の宣誓であれ国家の審判作用の適正という観点からみるとその評価に異なるところはなく、陳述後に宣誓をした証人であっても、偽証罪にいう「宣誓した証人」 にあたるものと解すべきとされています。
虚偽の陳述をした後に宣誓をした証人に対し、偽証罪の成立を認めた以下の判例があります。
大審院判決(明治45年7月23日)
裁判所は、
- 刑法第169条の偽証罪成立するには、証人が適正に宣誓したる後において虚偽の陳述を為したることを必要とせず、証人が(1)法律に従い宣誓したること、(2)故意に虚偽の陳述を為したることに要素併存するをもって足る宣誓が陳述の前にあると、その後にあるとによりて本罪の構成に影響を及ぼずことなく、証人が民事訴訟法第306条第2項(注:旧法)により尋問終了後において宣誓したる場合といえども、苟も証人として故意に虚偽の陳述を為し たる以上は偽証罪の責を辞することを得ざればなり
と判示し、陳述後に宣誓をした証人についても偽証罪の主体となるとしました。