前回の記事の続きです。
背任罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反との関係
背任罪と「預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反」(預金等不当契約取締法5条1項1号に規定する導入預金の罪)と、この導入預金契約の実行という形でなされた不良貸付が構成する背任罪との関係が問題とされ、 背任罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反とは併合罪になるとした以下の判例があります。
裁判所は、
- 預金等不当契約取締法は、金融機関の業務の有する公共的使命にかんがみて、その経営の健全化とひいて一般預金者の保護を図ると共に、正常かつ健全な金融秩序の維持をも右に劣らぬ重要な目的とする政策上の取締法規であり、同法5条の罪については、それがほかならぬ金融機関の役職員による右公共的使命に対する背反的行為であるところに、処罰の実質的理由が存するものである
- それゆえにこそ、同法5条所定の要件のもとに融資が約されれば、それによってただちに同条の罪が既遂に達するものとされているのであって、右融資の約束の現実の実行の有無、当該預金以外の担保の徴収の有無等、金融機関の財産に対する侵害の発生又は危険の具体化に関する事項は、右の罪の成否とはなんら関わりがないのであり、もとより、背任罪における要素である図利、加害目的のごときも右の罪の構成とは無縁である
- すなわち、背任の罪と預金等不当契約取締法5条の罪との間には、犯罪構成要件の仕組み、倒裁の趣旨及び対象、保護法益、処罰の実質的理由等の点において重要な一般的差異が存するのであって、これによれば、両者が一個の行為によって行われる場合があるとしても、その間にいわゆる法条競合の関係があると解するのは相当でなく、両者は、各所定の構成要件を充足することにより、別個独立に成立することを妨げられるものではない
とし、
- 被告人らの背任の行為(背任罪)と預金等不当契約取締法5条違反の罪とはその自然的行為を別個にするものである
と判示し、両者は併合罪の関係に立つと判示しました。