道路交通法違反

無免許運転(5)~「運転免許の取消し(停止)の効力発生時期」を説明

 前回の記事の続きです。

運転免許の取消し(停止)の効力発生時期

 運転免許が取り消されれば、運転免許を受けていない者となるので、取り消された後に自動車又は一般原動機付自転車を運転すれば、道路交通法違反(無免許運転)が成立します。

 この場合に、運転免許の取消し(停止)の効力発生時期はいつかについては、

被処分者が取消し(停止)を了知(処分通知を受けたとき)した時に運転免許の取消し(停止)の処分の効力が発生する

と解されています。

被処分者が処分通知書の受領を拒否した場合の運転免許の取消し(停止)の効力

 運転免許の取消し(停止)の処分通知は、要式行為ではなく、通知行為なので、被処分者が処分通知書の受領を拒否した場合は、処分執行者側で確実に被処分者が、その処分を知り得たことを担保しておけば十分であるとされます。

 その方法としては、運転免許の取消し(停止)処分を告知する場合、立会人をおくことがよいとされます。

 その処分を知り得たことの担保がとれれば、運転免許証を提出しなくても、運転免許の取消し(停止)の処分の効力が発生します。

 このことから、運転免許証を所持していながら無免許運転ということがあり得ることになります。

運転免許の取消し処分に瑕疵があった場合の道路交通法違反(無免許運転)の成否

 運転免許の取消し処分に瑕疵があった場合でも道路交通法違反(無免許運転)が成立するかという問題があります。

 この問題について、運転免許の取消し処分の瑕疵が運転者にあった場合について、道路交通法違反(無免許運転) が成立するとした裁判例があります。

水戸地裁判決(昭和49年6月7日)

 裁判所は、

  • 他人の起こした交通事故について身代り犯人となった者が、それまで取得していた運転免許を右事故を理由に取消された場合、右取消処分の瑕疵は重大な違法に当たるが、右者が自らすすんで虚偽の自認をし、かつ、これを肯定すべき資料があった以上、その瑕疵は明白とはいえないから、右取消処分は当然に無効ということはできないし、また、右取消処分がその後右身代りの事実が判明したため、さらに取消されたとしても、右取消の原因が前記の虚偽の自認にあり、処分主体である公安委員会に落度が全くない限り既成の法秩序を破壊させることは法の趣旨とするところではないので、免許取消の効力は既往に遡らない
  • したがって、右免許取消後、右取消の取消があるまでの間にした自動車運転行為は、無免許運転に該当する

と判示しました。

運転免許の取消し(停止)処分の通知漏れがあった場合は、道路交通法違反(無免許運転)は成立しない

 一つの運転免許証に他の種類(大型免許、中型免許、原付免許等)の免許が併記されているとき、その免許で法令違反をしたときに取消し処分をするときは、併記されたすべての免許について取消し等の処分をすることができます(東京地裁判決 昭和44年7月19日)。

 一つの運転免許証に他の種類の運転免許が併記されているときで、全ての種類の運転免許を取り消す場合(停止する場合)は、その取消しを行う全ての種類の運転免許について取消しの処分通知しなければなりません。

 もし、そのうちの一つの種類の運転免許について通知漏れがあった場合は、取消し(停止)があったとしても、その通知漏れの運転免許にはその処分の効力は及びません。

 したがって、その通知漏れの免許にかかる自動車を運転したときは、道路交通法違反(運転免許証不携帯)の違反は成立することがあっても、道路交通法違反(無免許運転)は成立しません。

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