前回の記事の続きです。
免許外運転と道路交通法違反(無免許運転)
免許外運転をすれば、道路交通法違反(無免許運転)が成立します。
免許外運転とは、
特定の種類(大型免許、中型免許、原付免許等)の自動車又は一般原動機付自動車(以下、「自動車等」という)を運転することができる運転免許を受けているが、その運転免許で運転することができる種類の自動車等以外の自動車等を運転すること
をいいます。
例えば、
- 普通免許を受けているものが大型貨物自動車を運転すること
- 普通第一種免許を受けているものがタクシーを運転して営業行為をすること
などが該当します。
普通レントゲン車は、大型バスと同じ型のものを用いていますが、車体検査証記載の乗車定員、最大積載量及び車両総重量のいずれかが大型自動車の要件に該当するときは、大型免許を必要とします。
道交法85条11項は、第一種免許を受けた者の旅客自動車等の運転を禁止していますが、旅客自動車等は、旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転する場合が禁止されているものなので、白タク(国の許可を受けないで、自家用車やレンタカーに利用客を乗せ、有償で人や貨物を輸送する車両のこと)の場合はこれに該当せず、第二種免許を持たないで白タクを運転したとしても無免許運転とはならないと解されています。
錯誤により免許外運転をした場合でも、道路交通法違反(無免許運転)が成立する
錯誤により免許外運転をした場合でも、道路交通法違反(無免許運転)が成立します。
この点に関する以下の裁判例があります。
福岡高裁判決(昭和51年4月28日)
普通免許を有する者が大型自動車を普通自動車と誤信して運転した場合、それは法律の錯誤であって無免許運転の故意を阻却しないとし、道路交通法違反(無免許運転)の成立を認めた判決です。
裁判所は、
- ある車両が道路交通法上の普通自動車か又は大型自動車であるかは、法的評価(あてはめ)の問題であって、これに関する錯誤があり、そのため違法の認識を欠くに至ったとしても右はいわゆる法律の錯誤というべきであって、刑法38条3項に明らかなとおり、右錯誤により行為の違法を認識しなかったとしても故意犯として処罰され得るものであって、情状により刑の減軽をなすことができるにすぎないものである
- 仮に、故意の成立に違法性の意識の可能性が必要だとしても、前掲自動車検査証によれば、本件自動車は定員14名の乗合自動車であることが認められ、また当審における事実の取調によれば、その型式や諸元又は外形等により一見して普通自動車と異なることが認められるので、被告人において大型自動車たることを 認識する可能性がなかったわけではなく、むしろ注意していれば大型自動車であって、普通免許では運転できないことの認識の可能性は十分存したものと認められる
- そうしてみれば、所論の如き錯誤が存したとしても、無免許運転の故意を阻却しないので、これを是認し被告人に対し道路交通法118条1項1号、64条を適用した原判決は正当であって、所論のように事実を誤認し法令の適用を誤ったものとは認められない
と判示し、道路交通法違反(無免許運転)の成立を認めました。
被告人は、勤務する会社の自動車(元来、運転席及び座席が合計15人分設けられていたが、6人分の座席を取り外して荷物置き場として使用)を、座席取り外しの状況を認識しながら、乗車定員について格別の関心を抱くことがないまま、上司から人を乗せなければ普通免許で運転しても大丈夫である旨を聞いたことなどから、普通免許で運転することが許されると思い込み運転したという事案です。
裁判所は、
- 乗車定員が11人以上である大型自動車の座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった場合においても、乗車定員の変更につき国土交通大臣が行う自動車検査証の記入を受けていないときは、当該自動車はなお道路交通法上の大型自動車に当たる
- 前記事案概要の事実関係の下においては、本件自動車の席の状況を認識しながらこれを普通免許で運転した被告人には、無免許運転の故意を認めることができるというべきである
とし、道路交通法違反(無免許運転)の成立を認めました。