道路交通法違反

無免許運転(11)~「『更新手続中』の記載のある運転免許証の有効期限が満了した場合における道路交通法違反(無免許運転)の成否」を説明

 前回の記事の続きです。

「更新手続中」の記載のある運転免許証の有効期限が満了した場合における道路交通法違反(無免許運転)の成否

 「更新手続中」の記載のある運転免許証について、

  • 「更新手続中」である旨の表示が行われている免許証の有効期限が満了したとき
  • 明示の期間(交付予定日)が満了したとき

において、当該運転免許証を携帯して行う自動車又は一般原動機付自転車の運転は、

  • 道路交通法違反(無免許運転)となるか
  • 道路交通法違反(免許証不携帯)となるか
  • あるいは何らの違反にもならないか

という問題があります。

 この点について見解を示した以下の裁判例があります。

大阪高裁判決(昭和43年10月9日)

 「更新手続中」の記載のある運転免許証の有効期限が満了した場合に運転した場合は、道路交通法違反(免許証不携帯)が成立するとした判決です。

 裁判所は、

  • 運転免許証の更新は、運転免許証の有効期限の更新をいい、有効期限の満了に際し、適性検査を行った結果、これに合格した者に対し、公安委員会が免許証の有効期限をさらに同期間延長する処分を行うことをいうのであって、新たな免許を与える処分をいうものではない
  • したがって、免許証の更新の場合には、本来、新たに免許証を交付する必要はなく、単に現に所持する免許証に更新したことを明らかにする記入をするだけでも差し支えない
  • 施行規則第29条3項(旧規定)の規定は、免許証の有効期間や、変更された住居等を書き改める必要と顔写真を添付して免許所持者の人物確認を容易ならしめる必要などから新たな免許証を作成し、不必要となる旧免許証の悪用を防止する趣旨で新旧免許証の引替え手続を規定したものであって、本法に定めていない免許証更新の効力発生要件を規則をもって規定したものではないと解するを相当とする
  • 免許証の更新申請をして適性検査に合格し、旧免許証の有効期間経過後は旧免許証を携帯することによって新免許証の交付予定日と指定された日まで車両を運転することができるという行政処分がとられていて、右行政処分の満了でもある右指定日に所轄警察署に出頭すれば、新免許証の交付を受けてこれを携帯することができるのにこれを怠って右指定日の翌日以降に当該免許にかかる自動車を運転したときは、免許証不携帯の罪が成立するものというべきである

と判示しました

 上記裁判例のほか、以下の見解があります。

1 道路交通法違反(無免許運転)が成立するとする見解

  • 運転免許は、運転免許証の交付をその効力発生の要件としている
  • 免許証の更新もまた同様、「更新申請者が現に有する免許証と引替えに新たな免許証を交付して行う。」こととされている(規則第29条8項:旧規定)
  • したがって、免許証の更新手続中に、免許証の有効期限が満了し更新免許証の交付を受けていない場合には無免許運転の罪が成立する
  • もっとも、このような事案について、免許証の不携帯が成立するにすぎないとする反対説もある

2 道路交通法違反(無免許運転)の成立を認めてもよいとする見解

  • 交付指定日から長期間、何ら理由もなく、更新免許の受領をしないで放置し「更新手続中」の旧免許を故意に所持して運転した場合のように、免許の更新をしないのと同視できる程度の受領懈怠があるときは無免許運転行為とみなしてよい

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