「先読み」と「恐れ読み」
人間の脳が未来を予測するときの式は、
過去+現在=未来
です。
人間の脳は、過去の経験と現在の状況を基に、絶えず未来を思考します。
人間の脳のこの未来を予測する能力は、「先読み」と「恐れ読み」に区別できます。
「先読み」は、過去と現在から未来を予測することです。
「恐れ読み」は、人間に備わっているネガティブ本能の力により、恐怖や不安を感じる出来事を予測することです。
過去と現在から未来を予測する「先読み」と、ネガティブ本能から不安や恐怖を感じる出来事を予測する「恐れ読み」は、両方とも人間の脳の未来を予測する能力です。
しかし、「先読み」と「恐れ読み」では、もたらす効果が違います。
「先読み」は、未来を予測し、未来をコントロールしやすくするメリットをもたらします。
しかし、「恐れ読み」は、不必要に恐怖や不安を増幅させ、合理的な判断をできなくさせるデメリットをもたらします。
「恐れ読み」をしてしまっている場合は、意識的に「先読み」に切り替えなければなりません。
自分の脳が未来を予測するときに、「先読み」をしているのか、それとも「恐れ読み」をしているのかに自覚的になる必要があります。
なぜ「恐れ読み」をしてしまうのか?
人の脳は、起こってもいない不安や恐怖を想像するように設計されています。
ネガティブ本能をもっているということです。
狩猟採取時代の人類にとっては、ネガティブである方が(危険を予期できる方が)、ライオンなどの外敵に遭遇して襲われる確率を下げることができ、結果、生き残って子孫を残すことができました。
私たちは、そのような先人たちの子孫なので、ネガティブ本能を引き継いでいます。
このネガティブ本能により、脳が勝手に「恐れ読み」を実行します。
脳が「恐れ読み」をする理由は2つあります。
「恐れ読み」をする理由① 慎重な行動をとらせるため
理由の1つ目は、慎重な行動をとらせるためです。
がむしゃらに前に進むだけでは、地雷を踏んで命が危険にさらされることを脳は知っているのです。
「恐れ読み」をする理由② 事が起こったときの精神的苦痛を減らすため
悪い出来事が起こったことをシュミレーションしておくことで、精神的苦痛を減らすことができます。
脳が「恐れ読み」をするもう一つの理由は、自分の心を守るための免疫を作っておくためです。
【実験例】先読みできると精神的苦痛を減らすことがきる
実験例を紹介します。
【実験内容】
①強い電気ショックを20回与えるグループ(高ショックグループ)
と、
② 強い電気ショック3回と弱い電気ショック17回を与えるグループ(低ショックグループ)
に分け、それぞれ電気ショックを与える。
電気ショックを与えたときの、心拍数、発汗量、自己評価による恐ろしさの度合いを調査する。
【結果】
② の低ショックグループの方が、心拍は速く、発汗量は多く、自己評価による恐ろしさの度合いが高かった。
低ショックグループは、強さの異なるショックを受けたせいで、未来を予測できなかったため、高ショックグループよりも精神的苦痛が大きくなったということです。
(先読みできない苦痛3回は、先読みできる苦痛20回より痛い)
苦痛を先読みしておくことで、精神的ダメージを軽減できることを証明した実験です。
まとめ
過去と現在の情報から、客観的に未来を予測する「先読み」は、有益性があるので、推奨できます。
しかし、不安や恐怖を予測する「恐れ読み」は推奨できません。
「恐れ読み」の本質が、自分を怖がらせるために行うものだからです。
「恐れ読み」をしていることに気づいたら、「先読み」に思考を切りかえる必要があります。
そのためにも、脳が行う未来予測は、
- 「先読み」と「恐れ読み」の2つに区別できること
- 自分が今「先読み」をしているのか、それとも「恐れ読み」をしているのかを意識できること
が大切です。