道路交通法違反

道交法違反(事故報告義務違反)(1)~「事故報告義務違反(道交法72条1項後段)」を説明

 これから13回にわたり、道交法72条1項後段の道交法違反(事故報告義務違反)を説明します。

道路交通法違反(事故報告義務違反)とは?

道交法72条1項の前段と後段の説明

 道交法72条1項は、交通事故があったときの運転者その他の乗務員の措置について定めたものであり、

  • 72条1項前段において、救護措置義務違反
  • 72条1項後段において、事故報告義務違反

を規定します。

 道交法72条1項は、前段で、

  • 交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない

と規定し、後段で、

  • この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第75条の23第1項及び第3項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない

と規定します。

道交法違反(事故報告義務違反)とは?

 道交法72条1項後段の道交法違反(事故報告義務違反)は、

道交法72条1項前段の救護措置義務が生じ必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転者に警察官に対する事故報告義務を定めたもの

です。

罰則

 道交法違反(事故報告義務違反)の罰則は道交法119条1項17号にあり、

3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処する

と規定されます。

事故報告義務の趣旨

 事故報告義務は、交通事故が発生した場合に個人の生命、身体及び財産の保護、公安の維持等の職責を有する警察官に、速やかに道交法72条1項後段所定の各事項を知らせ、負傷者の救護及び交通秩序の回復等について、当該事故に対する適切妥当な措置を検討、実施させるためのものです。

 事故報告義務は、

  • 車両等の交通により人の死傷があった場合

のほか、

  • 単に物の損壊があっただけの場合(その損壊の大小を問わない)

でも報告義務が発生します。

 事故報告義務は、その交通事故により交通秩序が混乱したかどうか、すでに負傷者が救護されたかどうか等の具体的状況のいかんに関係なく、当該車両等の運転者に対し警察官に報告すべきことを義務づけた趣旨のものと解されています。

 上記の点を判示したのが以下の判例・裁判例です。

東京高裁判決(昭和50年2月18日)

 裁判所は、

  • 道路交通法72条1項後段所定の報告義務は、同条所定の交通事故があったときは、個人の生命、身体及び財産の保護、公安の維持等の職責を有する警察官にすみやかに前記法条所定の各事項を知らせ、負傷者の救護及び交通秩序の回復等について、当該事故に対する適切妥当な措置を講ずる必要性の有無等を、その責任において判断させ、前記職責上とるべき万全の措置を検討、実施させるためにあると解される

と判示しました。

最高裁判決(昭和44年6月26日)

 裁判所は、

  • 道路交通法72条1項後段は、車両等の交通により単に物の損壊があっただけの場合においても、その損壊の大小を問わず、これを警察官に報告すべきことを規定したものと解すべきである

と判示しました。

東京高裁判決(昭和47年5月29日)

 裁判所は、

  • 道路交通法72条1項後段の規定は、いやしくも同条所定の交通事故が発生した以上、その交通事故により交通秩序が混乱したかどうか、すでに負傷者が救護されたかどうか等の具体的状況のいかんに関係なく、当該運転者等に対し、同条所定の事項を警察官に報告することを義務づけた趣旨のものと解すべきである

と判示しました。

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