道路交通法違反

道交法違反(事故報告義務違反)(8)~「第三者が事故報告をした場合の事故報告義務違反の成否」を説明

 前回の記事の続きです。

たまたま第三者が事故報告をしても、事故の当事者の事故報告義務は消滅せず、その場から立ち去れば道交法違反(事故報告義務違反)が成立する

 事故とは関係がない第三者がたまたま事故報告をしてくれたからといって、事故の当事者の事故報告義務は消滅せず、その場から立ち去れば道交法違反(事故報告義務違反)が成立します。

 この点に関する以下の裁判例があります。

東京高裁判決(昭和45年10月28日)

 裁判所は、

  • 道路交通法第72条1項後段の報告義務は、交通事故を惹起した当該車両の運転者の社会的義務として被害者の救護、交通秩序の回復のため関係行政官庁に対する協力義務を規定したものであるから、たまたま第三者が通報したため救急要員が来たのち逃走した場合でも、みずから警察官に報告しないときは、法第72条1項後段の報告義務違反の罪が成立する

と判示しました。

第三者に事故報告をさせる場合は、事故当事者が自らが直接報告したものと同視できるものでなければならない

 第三者をして事故報告がさせる場合は、事故当事者が自らが直接報告したものと同視できるものでなければならなりません。

 この点に関する以下の裁判例があります。

大阪高裁判決(昭和58年8月27日)

 裁判所は、

  • 道路交通法第72条1項後段の報告は、本来、当該車両等の運転者がみずから直接所定の警察官に対して行なうべきものであるが、運転者が右報告をみずから直接行なわず、他人に依頼してこれを行なうことが許されるとしても、その場合でも、みずから直接報告をしたときと同様の報告義務の履行に伴う同法上の負担を免れるものではないと解するのが条理上公平にかなうというべきである
  • したがって、運転者がみずから直接警察官に所定の報告をした場合に、同条2項により、警察官が現場に到着するまで現場を去ってはならない旨の命令(以下、「現場滞留命令」という。)を受けることがある以上、他人を介して報告をしようとする運転者は、少くともその他人が警察官に対して報告をすませたことを確認すべきであることはもちろん、右報告を受けた警察官から、右の現場滞留命令をその他人に介して受けたか否かを確認するのでなければ、みずから警察官に所定の報告をした場合と同様に右報告義務を尽したことにはならないと解するのが相当である

と判示しました。

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