道路交通法違反

道交法違反(過失建造物損壊)(1)~「道交法違反(過失建造物損壊)とは?」「『車両等の運転者』『業務上必要な注意を怠り』の意義」を説明

 これから5回にわたり、道交法116条の道路交通法違反(過失建造物損壊)を説明します。

道路交通法違反(過失建造物損壊)とは?

 道交法違反(過失建造物損壊)は、道交法116条において、

1項 車両等の運転者業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する

2項 特定自動運行を行う者又は特定自動運行のために使用される者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により、特定自動運行によって他人の建造物を損壊したときは、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 この記事では、条文中にある

  1. 「車両等の運転者」
  2. 「業務上必要な注意を怠り」

の意義を説明します。

①「車両等の運転者」とは?

 道交法116条1項の条文にある「車両等の運転者」とは、

の運転者をいいます。

 道交法違反(過失建造物損壊)の条文は、「車両等の運転者が業務上必要な注意…」と規定しているのみで、「車両等を運転中に…」という文言は用いてません。

 このことから、道交法116条1項の「運転者」とは、

道交法2条1項18号に「当該車両等の運転をする者」とされている運転者のこと

であり、

必ずしも現実にその車両等を運転している状態にある者ばかりでなく、その車両等を運転していた者が、一時その運転をやめ、更にその車両等を運転することとなる者も含まれているもの

と解されています。

 したがって、運転進行中はもとより、

  • 駐停車中の車両等が運転者の過失により暴走して住宅に突っ込んだ場合
  • 路肩の軟弱なところに駐停車した過失により、車両等が転落して下にある住宅を圧倒した場合
  • 整備不良で燃料タンクからガソリンが流出しているのに気付かずに駐車していたところ、何らかの原因で発火し、もよりの建造物を燃焼したりした場合

も、道交法116条1項所定の過失が認められる限り、道交法違反(過失建造物損壊)が成立すると考えられています。

②「業務上必要な注意を怠り」とは?

「業務上必要な注意を怠り」の「業務」とは?

1⃣ 「業務上必要な注意を怠り」とは、

刑法211条前段業務上過失致死傷罪における場合と同様に解すべきもの

と考えられており、この場合の「業務」とは、

人がその社会的地位に基づき、反復継続して従事する仕事を意味するもの

と解されています。

※ 業務上過失致死傷罪における「業務」の意義の説明は、業務上過失致死傷罪(19) の記事参照

2⃣ 1回の行為でも、反復継続する意思で開始したものであれば、「業務」の観念のうちに含まれると考えれています。

3⃣ 車両を運転する行為については、無免許で行う場合も「人がその社会的地位に基づき、反復継続して従事する仕事」の要件に該当する限り、 ここにいう「業務」に当たるものと解されています。

「業務上必要な注意を怠り」の「必要な注意を怠り」とは?

 「必要な注意を怠り」とは、

車両等の運転の業務に従事する者がその業務遂行上、法令又は社会通念上要求される注意義務を怠ること

をいいます。

 「業務上必要な注意を怠り」とは、一般には、一定の業務に従事する者の過失を前提としますが、一般人の負担すべき注意義務に比較して特別高度の注意を要求している趣旨ではなく、

単に一定の業務に従事する者に対する一般警戒の必要上その業務に従事する者以外の者より重い刑事責任を規定したものである

と解されています。

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