刑法(16歳未満の者に対する面会要求等の罪)

16歳未満の者に対する面会要求等の罪(2)~「16歳未満の者に対する面会要求罪(刑法182条1項)」「16歳未満の者に対する面会罪(刑法182条2項)」説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、

  1. 16歳未満の者に対する面会要求罪(刑法182条1項
  2. 16歳未満の者に対する面会罪(刑法182条2項

を説明します。

① 16歳未満の者に対する面会要求罪(刑法182条1項)の説明

 16歳未満の者に対する面会要求罪は、刑法182条1項において、

わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する

1号 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること

2号 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること

3号 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること

と規定されます。

 以下で条文の文言の意義について説明します。

「わいせつの目的」とは?

 刑法182条1項の「わいせつの目的」とは、

面会を要求した者をわいせつ行為の客体とする目的

をいいます。

 「わいせつ」は、性的行為全般をいい、性交を含みます。

 本罪の「わいせつの目的」は、わいせつ目的略取・誘拐罪(刑法225条)における「わいせつの目的」と同様の意味であるとされます(この点の説明は営利・わいせつ等略取・誘拐罪(4)の記事参照)。

「面会」とは?

 刑法182条1項の「面会」とは、

人と直接会うこと

をいいます。

「要求」とは?

1⃣ 刑法182条1項の「要求」とは、

面会を求める意思表示

をいいます。

2⃣ 「要求」は、被害者がそれを了知することを要します。

3⃣ 「要求」は、直接的・明示的なものに限りません。

 「要求」は、間接的・黙示的なものであってもよいとされます。

 「要求」の具体的な方法として、SNSやLINEのメッセージ機能の機能を使っての要求が挙げられます。

「威迫」「偽計」「誘惑」「反復して」「金銭その他の利益」とは?

 刑法182条1項の「威迫」「偽計」「誘惑」「反復して」「金銭その他の利益」の意味を説明します。

1⃣ 「威迫」とは、

気勢を示して被害者を不安にさせたり、困惑させる行為

をいいます。

2⃣ 「偽計」とは、

被害者の判断を誤らせる策略

をいいます。

3⃣ 「誘惑」とは、

被害者の気に入るような都合の良い言葉を使い、言葉巧みに取り入ったり、言いくるめたりすること

をいいます。

4⃣ 「反復して」とは、

複数回繰り返すこと

をいいます。

5⃣ 「金銭その他の利益」は、

  • 金銭や財物

が該当します。

 金銭や財物以外でも、

  • アパートの無償貸与

といった被害者の欲望を満たすものであれば「金銭その他の利益」に該当します。

② 16歳未満の者に対する面会罪(刑法182条2項)の説明

 16歳未満の者に対する面会罪は、刑法182条2項において、

1項の「16歳未満の者に対する面会要求罪」を犯した結果として、被害者である16歳未満の者と面会をすることで成立する犯罪

です。

 2項の「16歳未満の者に対する面会罪」(法定刑:1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)は、1項の面会の要求行為の結果、犯人と被害者が実際に面会するに至っているため、被害者が性被害に遭う危険性が現実のものとなっていることから、1項の「16歳未満の者に対する面会要求罪」(法定刑:2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)よりも重い刑が科されます。

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