前回の記事の続きです。
この記事では、16歳未満の者に対する映像送信要求罪(刑法182条3項)を説明します。
16歳未満の者に対する映像送信要求罪(刑法182条3項)の説明
16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、刑法182条3項において、
16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第2号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する
1号 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること
2号 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること
と規定されます。
16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、
16歳未満の者に対し、1号又は第2号に掲げるいずれかの性的な姿態をとってその映像を送信することを要求する行為
を処罰するものです。
16歳未満の者があらかじめ持っていた性的画像を送信するように要求しても本罪は成立しない
16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、その要求の対象となる行為について、「姿態をとって」と規定し、16歳未満の者に性的な姿態をとらせることを要件としているため、16歳未満の者に性的姿態をとらせることなく、16歳未満の者があらかじめ持っていた性的画像を送信するように要求しても本罪は成立しません。
「要求」とは?
刑法182条3項の「要求」とは、
1号の「性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること」
2号の「前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること」
を求める意思表示をいいます。
「映像」とは?
「映像」とは、
- 写真(静止画)
- 動画
をいいます。
1号の「性交、肛門性交又はロ腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること」とは?
「性交、肛門性交又はロ腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること」の要求行為とは、
被害者に対し、他人との間で性交、肛門性交、ロ腔性交をしてその姿態の映像を送信するように要求する行為
をいいます。
2号の「膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態をとってその姿態の映像を送信すること」とは?
2号の「膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態をとってその姿態の映像を送信すること」の要求行為は、
- 被害者の膣又は肛門に被害者自身の手指や性具等を挿入してその映像を送信するように要求する行為
- 被害者の膣又は肛門に他人の手指や性具等が挿入される姿態をとってその映像を送信するように要求する行為
- 他人の膣又は肛門に被害者の手指や性具等を挿入してその姿態の映像を送信するように要求する行為
が該当します。
2号の「性的な部位を触り又は触られる姿態をとってその映像を送信すること」とは?
2号の「性的な部位を触り又は触られる姿態をとってその映像を送信すること」 の要求行為は、
- 被害者が自己の性的な部位を触る姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
- 被害者がその性的な部位を他人に触られる姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
- 被害者が他人の性的な部位を触る姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
が該当します。
「当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る」とは?
2号に掲げる行為については、「当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る」とう条件が付されています。
これは、具体的な状況に照らして行為に性的な意味合いがない要求行為を処罰対象外とするものです。
なお、ここでいう「わいせつなもの」とは、不同意わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」と同じ意味であるとされます。
不同意わいせつ罪の「わいせつな行為」の意味の説明は不同意わいせつ罪(4)の記事参照。