性的姿態等影像記録罪(性的姿態撮影等処罰法6条)を説明します。
性的姿態等影像記録罪とは?
性的姿態等影像記録罪は、性的姿態撮影等処罰法6条において、
1項 情を知って、前条第1項各号のいずれかに掲げる行為により影像送信をされた影像を記録した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する
2項 前項の罪の未遂は、罰する
と規定されます。
「前条第1項各号のいずれかに掲げる行為」とは、性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為をいいます(詳しい説明は性的姿態等影像送信罪(3)の記事参照)
性的姿態等影像記録罪は、5条の性的姿態等影像送信罪で影像送信行為(インターネットによるライブ配信など)で、被害者の性的姿態影像の影像送信がなされた場合において、これを受信した者によってその影像が記録され、これが影像データとしてスマートフォンやパソコンの記録媒体に保存されると、被害者の性的姿態を他人や不特定・多数の者に見られることとなるという危険が生じることから、情を知って、5条の性的姿態等影像送信罪で影像送信された性的影像記録を保存する行為を処罰するものです。
保護法益
性的姿態等影像記録罪の保護法益は、
自己の性的な姿態を他人に見られないという性的自由・性的自己決定権
です。
主体(犯人)
主体(犯人)に制限はありません。
客体
性的姿態等影像記録罪の客体は、6条の条文中の表現でいうと、
- 前条第1項各号のいずれかに掲げる行為により影像送信をされた性的姿態影像
であり、分かりやすくいうと
- 性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為により影像送信をされた性的姿態影像
となります。
性的姿態等影像記録罪の客体となる影像送信をされた性的姿態影像は、性的姿態等影像送信罪(5条)と異なり、「不特定又は多数の者に対し」て映像送信されたものであることを要しない
性的姿態等影像送信罪(5条)で影像送信される性的姿態影像は、5条1項柱書に要件の規定があるとおり「不特定又は多数の者に対し」影像送信をされたものであることを要します。
これに対し、性的姿態等影像記録罪で受信する場合の性的姿態影像は、「不特定又は多数の者に対し」影像送信をされたものという要件の規定はなく、「不特定又は多数の者に対し」影像送信をされたものであることを要しません。
つまり、特定かつ少数の者に対して行われた像送信行為により送信された性的姿態影像を受信して記録する場合でも性的姿態等影像記録罪が成立します。
なお、「不特定又は多数の者に対し」影像送信されたものでない場合は、性的姿態等影像送信罪(5条)は構成要件を満たさず成立しませんが、この場合でも性的姿態等影像記録罪は成立することとなります。
行為
1⃣ 性的姿態等影像記録罪の行為は、
性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為により影像送信をされた性的姿態影像を記録すること
です。
2⃣ 6条の条文中の「記録」とは、
性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為により影像送信をされた性的姿態影像の記録を新たにスマートフォンやパソコンなどの記録媒体上に存在させること
をいいます。
例えば、
- インターネットでライブ配信されている情を知らない被害者の性的姿態影像を記録して動画データにし、パソコン上に保存する行為
が該当します。
性的姿態等影像記録罪の行為は、インターネットのライブ配信などで即時配信されている被害者の性的姿態影像を記録することにより成立する犯罪です。
つまり、既に動画データとしてスマートフォンやパソコンに保存されてる被害者の性的姿態影像を再生してインターネットで配信しているものを記録(複写)した場合は、性的姿態等影像記録罪の「記録」には該当せず、本罪は成立しません。
もっとも、この場合において、性的姿態等影像記録罪は成立せずとも、
- 記録(複写)した性的姿態影像の記録を提供する行為をした場合は、性的影像記録提供等罪(3条)が成立する
- 記録(複写)した性的姿態影像の記録を提供目的で保管した場合は、性的影像記録保管罪(4条)が成立する
ということはあります。
3⃣ 6条の条文中の「情を知って」とは、記録の対象となる影像が、
性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為により影像送信をされたものであることを認識していること
を意味します。
未遂罪
性的姿態等影像記録罪は、6条2項において、性的姿態等影像記録罪の未遂犯を処罰する規定を設けています。
例えば、
- 性的姿態等影像送信罪(5条)の1項1号~4号に掲げる行為により影像送信された影像を受信してパソコンに記録しようとしたが、パソコンの不具合により記録に失敗した場合
が該当し、この場合、性的姿態等影像記録未遂罪が成立します。