前回の記事の続きです。
2条1項3号の「面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること」とは?
ストーカー規制法2条1項3号は、ストーカー行為として、
- 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること
と規定します。
「義務のないこと」とは?
「義務のないこと」は、
- 要求の内容が第三者からみて不当であると評価できる事柄
であれば、それは「義務のないこと」といえます。
「義務のないことを行うことを要求すること」とは?
1⃣ 「義務のないことを行うことを要求すること」とは、例えば、
- 「話がしたいから連絡をしてくれ」と要求する場合
- 「復縁をしてほしい」と要求する場合
- 「会ってくれなければ自殺する」と脅迫的文言を使う場合
- 「明日、〇〇で会いませんか?」という提案の表現を使う場合
- 「お願いですから、別れないでください。」という丁寧な表現を使う場合
- 「別れないでほしい」「別の男と付き合わないでほしい」と不作為を要求する表現を使う場合
のいずれにおいても、被害者に拒否されているにもかかわらず執拗に繰り返し求める場合は「義務のないことを行うことを要求すること」に該当し得ます。
2⃣ 被害者に関わりを持つことを拒否されているのに、一方的に物を贈る行為は、
- 物品の受領を要求する行為
として、「義務のないことを行うことを要求すること」に該当し得ます。
例えば、
- 被害者宅の郵便ポストに手紙を投函して受け取ることを要求する行為
は「義務のないことを行うことを要求すること」に該当し得ます。
3⃣ 犯人の要求が正当な権利に基づくと認められる事情がある場合であっても、「義務のないことを行うことを要求すること」に該当する場合があります。
犯人の要求が正当な権利に基づくと認められる事情がある場合であっても、
- それが権利の濫用に当たる場合
には、「義務のないことを行うことを要求する」に該当し得ます。
例えば、
- 被害者との間に生まれた子供の親権を口実にして面会を要求する場合
- 被害者と離婚に係る慰謝料の支払を口実にして面会を要求する場合
- 実際に犯人が被害者に対し債権を有し、犯人が被害者に債務の返済を要求する場合
でも、その要求行為が権利の濫用と認められる場合は「義務のないことを行うことを要求する」に該当し得ます。
また、犯人の要求が
- 被害者において法律上の履行する義務がないこと
である場合には「義務のないことを行うことを要求する」に該当し得ます。
例えば、
- 犯人が、元交際相手である被害者に対し、これまでにかかった交際費を返還するように要求する場合
は、それは被害者において法律上の履行する義務がないことなので「義務のないことを行うことを要求する」に該当し得ます。
4⃣ 要求の手段に限定はなく、
- 口頭
- 文書(手紙、張り紙など)
- スマートフォンによるメッセージ送信
が手段として挙げられます。