ストーカー規制法

ストーカー規制法(13)~「警告」「禁止命令」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、ストーカー行為を行う犯人への

  1. 警告
  2. 禁止命令

を説明します。

①「警告」とは?

 「警告」は、ストーカー規制法4条13条14条に定めがあり、

警察本部長等が、犯人に対し、ストーカー規制法による規制行為である

  1. つきまとい等(2条1項・2項
  2. 位置情報無承諾取得等(2条3条

をやめるよう求めるもの

であり、行政指導(行政手続法2条6号)の一種です。

警告の主体(法第14条第3項)

 警告は、

  1. 警視総監
  2. 道府県警察本部長
  3. 警察署長

が行います(4条1項)。

 以下、①~③を「警察本部長等」といって説明します。

被害者等からの警告の申出(法第4条第1項)

 被害者等からの警告の申出であった場合、警察本部長等は、ストーカー規制法施行規則1条で規定する別記様式第1号の警告申出書の提出を受けて受理をします。

警告の要件

 警告の要件は、

  • 被害者等から警告の申出があること

そしてその上で、

  • 当該申出に係るストーカー規制法3条の違反行為があったこと

    かつ

  • 当該違反行為をした者(犯人)が更に反復して当該違反行為をするおそれがあると認められること

です(4条1項)。

警告の内容(法第4条第1項)

 警告は、更に反復して、

  1. つきまとい等(2条1項・2項
  2. 位置情報無承諾取得等(2条3条

をしてはならない旨を犯人に伝達するものです(4条1項)。

 警告の内容は、ストーカー規制法で規制される行為全てを行ってはらないというものです。

警告の方式

 警告は、ストーカー規制法施行規則2条1項で規定する別記様式第2号の警告書を交付して行われます。

 だだし、緊急を要し警告書を交付するいとまがないときは、口頭で行うことができます。

 警告の効力は、客観的に警告を受ける者(犯人)が内容を了知できる状態となった時点から発生します。

 そのため、警告書を交付して警告したにもかかわらず、警告を受ける者(犯人)が警告書を受け取らなかった場合であっても、既に警告は実施されていることとなり、効力が生じます。

警告をしたことの被害者等への通知

 警察本部長等が警告をしたときは、速やかに、その内容及び日時を当該警告の申出をした者(被害者等)に通知します(4条3項)。

②「禁止命令」とは?

 つきまとい等のストーカー行為を繰り返す者(犯人)に対して、公安委員会は「さらに反復して当該行為をしてはならない」と命じる法的措置をとることができ、この措置を

『禁止命令』

といいます(ストーカー規制法5条

 禁止命令は、警察本部長等が行う警告(4条)よりも重い処分であり、命令に違反した場合は、ストーカー規制法違反(禁止命令違反)が成立し、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処せられる場合があります(19条20条)。

 禁止命令の効力は1年間ですが(5条8項)、禁止命令の有効期間を延長することができます(5条9項)。

禁止命令の主体

 禁止命令は、公安委員会が行います(14条1項)。

 禁止命令は、

  • 被害者等の申出

    又は

  • 公安委員会の職権

で行われます(5条1項)。

禁止命令の要件

 禁止命令の要件は、

  • 当該申出に係るストーカー規制法3条の違反行為があったこと

   かつ

  • 当該違反行為をした者(犯人)が更に反復して当該違反行為をするおそれがあると認められること

です(5条1項)。

禁止命令の内容

 禁止命令の内容は、

  • 更に反復して当該行為をしてはならないこと(5条1項1号)

    又は

  • 更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項(5条1項2号)

です。

 5条1項1号の命令は、2条1項1~8号に規定する全てのつきまとい等に係る行為を更に反復してはならない旨を命ずるものです。

 5条1項2号の命令は、あくまで5条1項1号の命令の実効性を担保するための補充的なものであり、5条1項2号の命令のみを行う意味はありません。

 5条1項2号の命令の具体例として、

  • 写真、画像データ等が送付されている場合にその記録、記録媒体等を廃棄等すること
  • を命ずるなど、5条1項1号に係る命令の対象となっている行為を継続する手段となるもの
  • を廃棄等させる措置

が挙げれます。

 なお、5条1項1号の命令については罰則の対象となっていますが、5条1項2号の命令については罰則の対象となっていません(19条1項)。

聴聞(法第5条第2項)

1⃣ 公安委員会は、禁止命令を行うに当たり、事前手続として行政手続法の聴聞を行うこととなっています(5条2項

2⃣ ただし、一定の緊急性がある場合、聴聞を経ずに禁止命令を発出した上で、事後的に意見の聴取を行うことができます(5条3項)。

 この場合の禁止命令を「緊急時の禁止命令」といいます。

禁止命令の方式

 禁止命令は、ストカー規制法施行規則5条1項に規定する別記様式第5号の禁止等命令書を交付して行います。

 ただし、緊急を要し禁止等命令書を交付するいとまがないときは、口頭で行うことができます。

禁止命令をしたことの被害者等への通知

 公安委員会は禁止命令をしたときは、速やかに、その内容及び日時を禁止命令の申出をした者(被害者等)に通知します(5条6項)。

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