刑法(贈収賄罪)

単純収賄罪(13)~職務とは?③「監督権限を行使する公務員の行為は『職務』に該当するか否か?」を説明

 前回の記事の続きです

監督権限を行使する公務員の行為は「職務」に該当するか否か?

 公務員の中には、 自ら直接に特定の職務を担当しないが、指揮監督権を通じて、他の公務員の事務の遂行に影響を与えることができる者がいます。

 監督指揮権を有する公務員が、その監督指揮権を通じて他の公務員の事務の遂行に影響を与える場合は、監督指揮権が政策目的や所掌事務の的確な実現、遂行を図るためのものであるから指揮監督行為及びその権限に基づき働き掛けを行うことは、その公務員の「職務」と認められます。

 この点に関する以下の判例があります。

最高裁判決(平成7年2月22日)

 内閣総理大臣が、運輸大臣に対し、民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けた行為を賄賂罪における職務行為と認めた事例です。

 裁判所は、

  • 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる

と判示しました。

東京高裁判決(昭和60年12月3日)

 市が公社土地開発公社)に委託した業務について、公社の実施する公共工事に関し、市職員の職務権限が認め、市職員に対して単純収賄罪の成立を認めた事例です。

 裁判所は、

  • 本来市の固有の事務に属する市立小学校校舎移転用地造成工事を公有地の拡大の推進に関する法律に基づき設立された市土地開発公社に代替施行させた場合において、市が公社の業務の一部を引き受けることを当然の前提として両者間に業務委託関係が従来から確立した制度となっているなどの事情のあるときは、前記工事に関する公社の指名業者推薦依頼に応じて指名業者を推薦することは、市職員の職務権限に属する

と判示し、市職員に対して単純収賄罪の成立を認めました。

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