刑法(贈収賄罪)

受託収賄罪(1)~「受託収賄罪とは?」「受託収賄罪の成立要件」「受託収賄罪と単純収賄罪との相違点」を説明

 これから5回にわたり、受託収賄罪(刑法197条1項後段)を説明します。

受託収賄罪とは?

 受託収賄罪は、刑法197条1項後段において、

公務員が、その職務に関し、賄を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の拘禁刑に処する。

と規定されます。

 「この場合において、請託を受けたときは、7年以下の拘禁刑に処する」の部分が受託収賄罪の規定です。

 受託収賄罪は、

  • 公務員が職務に関し、職務に関して特定の行為をすることの依頼(請託)を受けて、賄賂を収受、要求、約束した場合

に成立します。

 請託とは、「公務員に対してその職務に関する行為を依頼すること」であり、例えば、

  • 建設会社の担当者が、賄賂を渡すので特定の公共工事で自社が有利になるように担当公務員に依頼すること
  • 刑事事件の関係者が、賄賂を渡すので事件をもみ消すように担当警察官に依頼すること

が挙げられます。

 受託収賄罪は、「公務員に対してその職務に関する行為を依頼する」という「請託」が伴う点において、

  • 単なる賄賂の場合と異なり、請託がある場合には、その請託を受託した点で、公務と賄賂が対価関係があるものとして具体的に結び付き、収賄者の悪性がより強いことが明白となること

から、単純収賄罪(刑法197条1項前段)よりも重く処罰されます。

犯行態様による罪名の区別

 受託収賄罪は、犯行態様に応じて、

  • 受託収賄罪の「賄賂収受罪」
  • 受託収賄罪の「賄賂要求罪」
  • 受託収賄罪の「賄賂約束罪」

に細分されます。

受託収賄罪の成立要件

 受託収賄罪は、請託を受けて、賄賂を収受、要求、約束すれば成立し、請託の内容を実現することは、本罪の成立に無関係です(最高裁判決 昭和27年7月22日)。

 賄賂の収受、要求、約束の以外の説明は単純収賄罪の記事を参照ください。

単純収賄罪(17)~収受とは?①「賄賂の『収受』とは?」「既遂時期」を説明

単純収賄罪(20)~「賄賂の『要求』とは?」「単純収賄罪(賄賂要求罪)」を説明

単純収賄罪(21)~「賄賂の『約束』とは?」「単純収賄罪(賄賂約束罪)」を説明

受託収賄罪と単純収賄罪との相違点

 受託収賄罪は、「請託」があるか否かが単純収賄罪と異なります。

 そのほかの点は単純収賄罪と全く同じです。

 したがって、「請託」以外の部分の説明については、単純収賄罪の記事を参照してください。

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