頭の中の世界は、感情によって歪められている
めったにない出来事(たとえば飛行機事故)は、感情に訴えかける強さがあるため、過大な注意を引き、実際以上に頻繁に起きるような印象を与えます。
そのため、人の頭の中にある世界は、現実の世界の複製になっていません。
人の頭の中にある世界は、感情によって歪められてます。
オレゴン研究所の実験
以下は、アメリカのオレゴン研究所のポール・スロビックらが行った実験です。
実験内容
被験者に2種類の死亡原因を並べた問題を出題し、どちらの死亡頻度が高いかを予測させ、頻度を見積もってもらう。
実験結果
・脳卒中による死亡数は、事故(あらゆる事故の合計)の死者の2倍に達するにもかかわらず、被験者の80%は、事故死の方が多いと答えた。
・病死は、事故死の18倍に達するにもかからず、両者は同程度と判断された。
・事故死は、糖尿病の死亡数の300倍と判断されたが、実際には、糖尿病が事故死の4倍である。
実験結果の考察
マスコミなどで報道される事故死のニュースは、感情に強いインパクトを与えます。
そのため、被験者の頭の中の世界は、実際以上に事故死が頻繁に起こる世界となっていたのです。
マスコミなどの報道メディアは、広告型ビジネスなので、大衆の関心を引くニュースを売らなければなりません。
そのため、大衆の感情に訴えかけるニュースを選んで報道します。
これにより、大衆の頭の中の世界は歪められます。
批判、自己否定などのネガティブな出来事
批判、自己否定などのネガティブな出来事についても、『めったにない出来事は、実際以上に頻繁に起こっていると認知される』という心理法則が適用されます。
批判、自己否定などのネガティブな出来事は、感情が強く揺さぶられる出来事だからです。
- 学生の頃に、恥をかいた出来事を、大人になった今でも覚えている
- 職場において、ディスられたり、おとしめられた出来事を、ふとした瞬間い思い出して嫌な気持ちになる
などのトラウマは、誰しもが何かしら持っていると思います。
トラウマとなった出来事は、人生の合計時間の中で、ほんの一部の時間に経験した出来事です。
にもかかわらず、感情を揺さぶられる出来事であったために、
- 脳に記憶が深く刻み込まれ
- 脳から取り出しやすい記憶情報となるため
反復して思い出してしまいます。
そのため、人生は辛いことが多いと錯覚してしまい、頭の中の世界が歪められ、人生に対して悲観的になってしまうのです。
【余談】利用可能性ヒューリスティック
ちなみに、取り出しやすい記憶情報に頼って思考してしまうことを、心理学では、「利用可能性ヒューリスティック」と名づけられています。
人は、
- 簡単に思い出せる記憶情報
- 努力を要せずに思い出せる記憶情報
- 無意せずとも思い出せる記憶情報
に頼って思考を展開していきます。
脳から取り出しやすい記憶が、ネガティブな記憶になっている人は、頭の中の世界が悲観的な世界になり、ネガティブ思考の影響で、負け組の人生を送ることになるので、注意が必要です。
まとめ
人には、
『めったにない出来事は、実際以上に頻繁に起こっていると認知される』
という心理法則があることを分かっておくことが大切です。
人は、感情が揺さぶられる出来事が記憶に残るため、頭の中の世界が歪んでいる(現実の世界を正しく複写していない)ことを自覚できることが重要です。