闘争・逃走反応とは?
闘争・逃走反応とは、危険を感知して対処しようとする人の生理反応をいいます。
人は、危険を予測し、記憶し、概念化する能力があります。
この能力のおかけで、現に目の前に危険が迫っていなくても、ストレス反応が起きてしまいます。
恐ろしい状況になると想像するだけで、興奮状態・ストレス状態に陥り、闘争・逃走反応が起きます。
闘争・逃走反応により起こる身体の反応
闘争・逃走反応が起こると、脳からアドレナリンがどっと分泌されます。
アドレナリンが分泌されると、集中力が高まり、心拍数と血圧が上がり、気管支が広がってたくさんの酸素を筋肉に送り、瞬時に動ける状態になります。
皮膚の血管は収縮し、傷つけられても出血しにくくなりなす。
あせて、脳からエンドルフィンが分泌され、痛みを感じにくくなります。
また、消化系が遮断され、食欲が減退します。
強いプレッシャー下において「腹減った!」とならないのは、このためです。
性欲も減退します。
唾液も止まります。
大勢の前でスピーチをするとき、ストレスで、口の中がカラカラになった経験があることと思います。
凍結・逃走・逃走反応
ストレスにより、上記のような身体の反応が過剰になり過ぎると、
- 筋肉がこわばり動けなくなる
- 脳の前頭前野(思考をつかさどる脳の部位)の機能が激減して何も考えられなくなる
というフリーズ状況に陥ります。
フリーズ状態を引き起こす本格的なストレス反応は、「凍結・闘争・逃走反応」と呼ばれます。
「闘争・逃走反応」が重症化すると、「凍結・闘争・逃走反応」にレベルアップします。
闘争・逃走反応が過敏な人
現代は、突然、肉食動物に襲われて、命を奪われるような危険な社会ではなく、平和な社会です。
そのため、闘争・逃走反応は、過敏に反応しない方が、ストレスなく過ごせるので助かります。
にもかかわらず、闘争・逃走反応が過敏に反応してしまい、常に危険感知システムを動かし、常時、トラブルに備えている状態になってしまっている人たちがいます。
闘争・逃走反応が過敏に起こってしまうと、他人からの怒りの感情や、他人からの批判に過敏に反応してしまい、精神を疲弊したり、メンタルが落ち込むことが多くなるなど、人生に有害をもたらします。
闘争・逃走反応が過敏になる原因
闘争・逃走反応が過敏になる原因は、子どもの頃の家庭環境にあります。
それを裏付ける研究(実験)があります。
実験内容
生後6か月から12か月の乳児を対象に、眠っている間に機能的磁気共鳴映像装置(fMRI)で脳波を探るという実験です。
この装置を使うと、刺激に対して、脳のどの部分が反応するのかが分かります。
乳児が眠っている間に、「怒ったしゃべり声の録音」を流して、乳児の脳の反応を調べました。
実験結果
家庭内口論のほとんどない家庭環境いる乳児は、怒り声に対して、比較的穏やかな反応を示しました。
それに対し、家庭内口論が頻繁にある家庭環境いる乳児は、fMRIの画像で、感情、ストレス反応、自制に関わる脳の部位にはっきりとした反応が示されました。
家庭環境の不和、親の攻撃的な言動は、乳幼児の脳に、闘争・逃走反応が起こりやすい神経回路を作るということです。
家庭環境の不和、親の攻撃的な言動などのストレス環境が、乳幼児の脳に、『自分が生まれ落ちた世界は不安定で混沌としていて予測がつかない』ということを刷り込むのです。
子どもの脳は、周囲の世界に決まったパターンを探しています。
それなのに、自分のいる環境が、不安や恐怖が流動的におとずれる不安定な環境の場合、子どものストレス反応システムは、不安定な人生への準備をはじめ、何が起こってもいいようにつねに警戒することになります。
そのため、闘争・逃走反応が過敏な神経回路が出来上がってしまうのです。
これは、子どもに限らず、大人でも起こってしまうことです。
有害なストレス環境に居続ければ、子どもほどではないにしても、大人も闘争・逃走反応が過敏に反応するようになってしまいます。
闘争・逃走反応が過敏になる原因を知ることが大切
闘争・逃走反応が過敏な人は、その原因を考えられることが大切です。
闘争・逃走反応が過敏に起こる原因は、自分の周囲の環境にあります。
有害なストレスにさらされる環境に居させられたために、闘争・逃走反応が過敏に反応してしまうのです。
過敏な闘争・逃走反応は、言わば、不幸な環境が作り出した呪いです。
闘争・闘争反応は、非常に敏感で、ひとたび「怒鳴り声」、「批判」などのストレス環境が生まれれば、すぐに引き金が引かれ、大音量で車のクラクションを鳴らされて煽られ、心臓がバクバクするような生理反応が起こります。
そうなった時には、闘争・逃走反応が起こっていることを自覚し、不幸な環境が作り出した呪いの発動と考え、冷静さを取り戻すことが大切です。