刑法(遺棄罪)

遺棄罪(9) ~「1個の遺棄行為によって数名を遺棄した場合の罪数(観念的競合)」「遺棄罪と略取罪・誘拐罪との関係」を説明~

 前回の記事の続きです。

1個の遺棄行為によって数名を遺棄した場合の罪数(観念的競合)

 1個の遺棄行為によって数名を遺棄した場合には、遺棄罪(刑法217条)は個人的法益に対する犯罪である上、各被害者ごとに生命・身体に対する危険が発生したのであるから、被遺棄者一人ごとに遺棄罪が成立し、各遺棄罪の関係は、観念的競合になります。

遺棄罪と略取罪・誘拐罪との関係

 幼児を略取又は誘拐して遺棄した場合には、略取・誘拐罪と遺棄罪は牽連犯であるとする見解がありますが(学説)、略取又は誘拐と遺棄との間に、通常、手段結果の関係があるとは考えられないので、併合罪になると解されます。

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