刑法(建造物等以外放火罪)

建造物等以外放火罪(1) ~「建造物等以外放火罪とは?」を説明~

 これから5回にわたり、建造物等以外放火罪(刑法110条)の説明をします。

建造物等以外放火罪とは?

 建造物等以外放火罪(刑法110条)は、

  1. 放火して、前二条(刑法第108条:現住建造物等放火罪、刑法第109条:非現住建造物等放火罪)に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する
  2. 前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する

と規定します。

 建造物等以外放火罪の予備、未遂の罰則はありません。

 本罪は、

現住建造物等放火罪(刑法第108条)と非現住建造物等放火罪(刑法第109条)を補充するもの

です。

 具体的には、

  • 現住建造物等放火罪(刑法第108条)の客体(現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑)
  • 非現住建造物等放火罪(刑法第109条)の客体(現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑)

以外の一切の客体に対する放火について規定するものです。

 このことから、建造物等以外放火罪は、「非建造物放火罪」ともいわれます。

 建造物等以外放火罪は、具体的危険犯であって、公共の危険が具体的に発生したことを要件とし、

公共の危険の発生のないときは建造物等以外放火罪は成立せず

別途、器物損壊罪刑法261条)が成立するか否かの問題となります。

刑法110条2項の規定

 刑法第110条2項の現住建造物等放火罪の規定は、

犯人の自己所有物に対する放火について、財産犯的要素が欠けることを考慮し、軽い刑で処罰することとしたもの

です。

森林法202条1項との関係

 現住建造物等放火罪の刑法第110条2項特別刑法として、森林法202条1項・2項があります。

 森林法202条は、

  • 1項 他人の森林に放火した者は、2年以上の有期懲役に処する
  • 2項 自己の森林に放火した者は、6月以上7年以下の懲役に処する
  • 3項 前項の場合において、他人の森林に延焼したときは、6月以上10年以下の懲役に処する
  • 4項 前二項の場合において、その森林が保安林であるときは、1年以上の有期懲役に処する

と規定します。

 森林法202条1項・2項は、森林に放火することのみで構成要件を充足し、森林法違反が成立します。

 刑法第110条2項の現住建造物等放火罪のように、森林を焼損すること及び公共の危険を発生させることは犯罪の要件としていません。

 その理由は、森林放火は、

  • 人里離れた山中の火災は消火が困難であること
  • 森林火災は森林資源の保護や国土保全に重大な支障を生じさせること
  • いったん火災にあった林地は数年間不毛に帰すること

から、森林放火に対しては厳罰をもって臨むため、現住建造物等放火罪の刑法第110条2項のように、森林を焼損すること及び公共の危険を発生させることを犯罪の成立要件としないものです。

実行行為

 建造物等以外放火罪(刑法110条の実行行為は、

火を放って目的物を焼損すること

です。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

建造物等以外放火罪の客体の具体例

を説明します。