刑法(逮捕・監禁罪)

逮捕・監禁罪(29) ~「逮捕罪、監禁罪における幇助犯」を説明~

 前回の記事の続きです。

幇助犯とは?

 幇助犯とは、

正犯(犯罪の実行者)を手助けした者

をいいます(刑法62条1項)。

 幇助とは、

正犯(犯罪の実行者)を手助けし、より簡単に犯罪を実行できるようにすること

をいいます。

※ 幇助犯の詳しい説明は前の記事参照

逮捕罪、監禁罪における幇助犯

 逮捕罪、監禁罪の幇助を認めた裁判例として、以下のものがあります。

名古屋地裁判決(平成19年3月12日)

 Cらが共謀して敢行した営利略取、逮捕監禁、強盗強姦の犯行につき、被告人は、あらかじめ被害者を拉致したことや被害者に対して強姦がなされたことなどを知り、かつ監禁場所の自動車修理工場に到着してからは被害者が監禁されている状況を見た上で、同工場にオートバイを預けにきたHから工場前でオートバイを受け取ってHが工場内に入るのを阻止し、Cらの犯行の発覚を防ぎ、Cらの犯行を容易にさせたとして、被告人が幇助した時点で未だ実行行為が終了していない監禁の幇助の成立を認めました。

東京高裁判決(平成19年8月8日)

 被害者を拉致監禁した上、殺害し、死体を切断して損壊し、切断した死体を山中に遺棄した犯行に関与した当時17歳の被告人に対して、「監禁について、被告人が果たした役割、関与に対する受動的態度、首謀者であるMとの隷属的ともいえないではない関係や、Mへの追随的な動機等を総合すると、Mらとの間で、共同意思の下に一体となって互いに実行に移すことを内容とする共謀が成立したとは認め難く、被告人については幇助犯が成立するにとどまるといわざるを得ないとして、監禁幇助を認定しました。

 なお、殺人、死体損壊についても幇助を維持したが、死体遺棄については共同正犯が成立するとしています。

仙台地裁判決(平成23年12月20日)

 殺人3件(うち1件は強盗殺人)等が起訴され、3つに分けて裁判員裁判の部分判決がなされた事件であるが、被害者Jに対する営利誘拐、逮捕監禁、強盗殺人について幇助の認定をした事例です。

 裁判所が認定している幇助行為は、被告人は、F、Gらが、仙台在住のJを東京都内で誘拐し乗用車内などに監禁して仙台市内の山林まで連行した上、殺害して現金等を強取する計画を知りながら、Jにその事実を告げずに仙台から東京に送り出し、同犯行を実行中のFと電話で連絡を取り合って、仙台市内で自己の乗車した車両でJを監禁している車両を先導し、FからJが殺害された旨の連絡を受けた後、J方からJ所有の現金、預金通帳を持ち出すなどして、 Fらの前記犯行を容易にさせて幇助したというものです。

 そして、共同正犯であるとの検察官の主張に対しては、被告人がFとの間で本件犯行を実行することについて意思の連絡があったとと及び被告人が本件に一定程度協力する言動をしていることを認めたものの、被告人が本件各犯行に積極的に参加する動機も、犯行により具体的な利益を得たという事実も証明されていない(被告人はJ方から持ち出した現金等もすべてFやJの両親に渡している)から、被告人が自己の犯罪を行う意思をもって、Fとの間で本件各犯行を共同して実行する意思を通じ合っていたとは認めることができず、被告人とFとの間で本件共謀があったとは認められないから、強盗殺人等の共同正犯は成立せず、幇助が成立するにとどまるとしました。

名古屋地裁判決(平成24年8月8日)

 被告人は、自ら代表取締役を務めるH社の取引先として懇意にしていたAから頼まれて、AらがB社の関係者を逮捕監禁することを認識しながら、B社に電話をかけて架空の取引話を持ちかける方法により、B社関係者にH社へ来訪するよう勧誘して、被害者Cをおびき出すとともに、Aらに対して逮捕監禁場所としてH社の敷地である駐車場を提供した上、Cをそこに向かわせるとともに、Aにその旨伝えるなどして、AらがCを逮捕監禁することを容易にさせてこれを幇助したとし、逮捕幇助、監禁幇助を認定しました。

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