前回の記事の続きです。
逮捕・監禁罪で保護されるのは「移動の可能的な自由」である
逮捕罪・監禁罪(刑法220条)で保護の対象となるのは、
- 移動の可能的な自由で足りるのか(可能的自由説)
それとも
- 現実的に移動の自由が妨害された場合に限定されるのか(現実的自由説)
について、学説では争われているところ、
「可能的自由説」が多数説
となっています。
少数説の「現実的自由説」は、現実に移動しようとしても阻止されてできない場合だけを処罰すれば足りるとするのです。
例えば、熟睡中の者の部屋に外から鍵を掛け、目を覚ます前にこれを外したような場合には監禁罪が成立しないとします。
これに対し、多数説の「可能的自由説」は、たとえ、監禁された時点では眠っていて現実的には移動が考えられないとしても、いつ目覚めて移動しようとするかも知れないのであるから、眠っている段階においても移動の自由は保護される必要があると考えます。
なので、例えば、熟睡中の者の部屋に外から鍵を掛け、目を覚ます前にこれを外したような場合でも監禁罪が成立するとします。
移動しようと思ったとしても移動できない状態が作られていることは、行動の自由の侵害にほかならないのであって、十分に処罰に値するし、また、監禁罪の成立を被害者のそのときどきの心理状態にかからせるのは、犯罪の成否が不安定になることを考えれば、「可能的自由説」が妥当であるということができます。