前回の記事の続きです。
監禁の意義
監禁罪(刑法220条)にいう監禁とは、
人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にしてその行動の自由を奪うこと
をいいます。
監禁の場所は、部屋のように区画された場所でなくてよい
「一定の区域」とは、必ずしも部屋のように区画された場所でなくてもよく、一定の場所であればよいです。
参考となる以下の判例があります。
被告人が、顔見知りのT女を強姦(現行法:不同意性交)しようと企て、「家まで乗せて行ってやる」と言って同女を自己の運転する第二種原動機付自転車荷台に乗せ、時速約40キロメートルで疾走し、同女の家の前まで来たとき同女は「降ろしてくれ、車を止めてくれ」と言ったが、そのまま同速度で走り続け、同女の家から約1キロメートルの地点に至り、カーブのため速度を落としたとき、同女はとび降りて倒れ、全治約5日間を要する右肘関節内側擦過傷等の傷害を負ったという事案で、監禁罪が成立するとしました。
一審、二審とも監禁致傷罪の成立を認めたところ、被告人が上告し、弁護人の上告趣意で
- 被告人は第二種原動機付自転車に乗り、被害者は後の荷台に被害者の自由意思で乗り走ったものである
- 被告人は原動機付自転車が走る間も、被害者の体に有形力を行使したわけではない
- 原動機付自転車は自動車のように外がこいはない
- 公然、人の通行する往来に開放されている
- 本件について不法監禁罪の成立を消極に解すべきである
と主張しました。
この主張に対し、最高裁は、
- 婦女を姦淫する企図の下に自分の運転する第二種原動機付自転車荷台に当該婦女を乗車せしめて1000メートルに余る道路を疾走した所為を以て不法監禁罪に問擬(もんぎ)した原判決の維持する第一審判決の判断は、当審もこれを正当として是認する
と判示しました。
この決定は、監禁罪における場所的要件についての判断について、監禁の場所として囲い場所であることを要するかという問題点につき、そのようなことは必ずしも必要がないとした点が注目されます。
疾走中の原動機付自転車の荷台は、往来に開放されてはいるが、飛び降りるには傷害を負うこと、あるいは下手をすると死ぬことも覚悟しなければならず、また通行人に救助を求めるとともに簡単ではなく、被害者は荷台から動こうにも動けないのであるから、監禁罪の場所的要件を充たすことは明らかであるといえます。
長崎地裁判決(昭和33年7月3日)
被害者に対し、脅迫したり暴行を加えたりして、渡し舟の桟橋から約300メートル(陸地最短距離約25メートル)の沖合海中に孤立した瀬標(直径約15メートル)に上らせた上、置き去りにして船で帰り、約1時間半にわたり被害者をそこから脱出不能にした事案について、監禁罪の成立を認めました。
脱出を不可能にする方法は、無形的・心理的な障害によってもよい
脱出を不可能又は著しく困難にする方法は、有形的・物理的な障害だけでなく、無形的・心理的な障害によってもよいです。
例えば、脅迫によって被害者を怯えさせ、一定の場所から外に出ることをできなくする場合が該当します。
参考となる以下の判例があります。
裁判所は、
- 監禁罪は、暴行によると脅迫によるとを問わず、他人を一定の場所の外に出ることができなくした場合に成立し、目的の如何を問わない
と判示しました。