前回の記事の続きです。
手足を緊縛したり鎖で繋いだりした上、部屋や自動車内などに閉じ込める監禁行為
監禁罪(刑法220条)の監禁行為について、
手足を緊縛したり鎖で繋いだりした上、部屋や自動車内などに閉じ込める監禁行為
があります。
この種の監禁行為について、判例上、以下のものがあります。
- 緊縛するなどした上、精神病院内の施錠した監置室に監置するというもの(大審院判決 昭和6年12月17日)
- 制縛して倉庫内に監置するというもの(大審院判決 大正10年4月11日)
- 通行中の男児(7歳)を甘言を弄して自動車に乗車させ、車内でその両手両足を麻縄で緊縛し、口にタオルで猿ぐつわをするなどして車内から脱出できないようにした上、さらに自己の愛人方に連行し、同所においても7日間にわたり同様の状態で監禁するというもの(最高裁決定 昭和58年9月27日)
- 両手首、両上腕部及び両足首を緊縛した上、深さ約63.5センチメートル、長径約84センチメートルの小判型中古風呂桶の中に入れ、上から蓋をして約20本の釘で打ち付けて、風呂桶内に監置するというもの(名古屋地裁判決 昭和34年4月27日)
- 被害者(当時9歳)の両手を針金で縛り、約2日半にわたり自宅押入の戸を開閉出来ぬよう釘づけにして押し込めるというもの(水戸地裁判決 昭和34年5月25日)
- 被害者4名を一室に入れ、手は手、足は足で数珠つなぎに麻縄で縛った上、両端を柱に結び行動の自由を奪うとともに、見張を立てるなどするというもの(東京高裁判決 昭和34年12月7日)
- 被害者を無理矢理自動車に乗せて連行して事務所の一室に連れ込み、被告人ら数名で交互に監視し、「金を払わんと帰さん。ここは刑務所と同じや。逃げようなどと思うな」などと言って脅迫し、被告人らのうち1人を残して一時外出する際には、被害者の首を鎖で縛り、一方の端を便器や長椅子の足にくくりつけて南京錠で施錠する等して監禁するというもの(大阪高裁判決 昭和53年7月28日)
- 住居侵入の現行犯人を発見するや、他の者と協力して同人の身体を紐で縛り、その端を座卓の足にくくりつけたりして逮捕したが、警察官に引き渡すことなく、上記の者らと共謀のうえ、交々脅迫の言辞を加え、後手の両手錠をかけるとともに、自分が就寝後も他の者に見張りをさせるなどして監禁するというもの(東京高裁判決 昭和55年10月7日)
- 被告人ら3名で、被害者の背後から両腕を締め付け、その両足首及び後手にした両手首をそれぞれ日本手拭で緊縛し、布粘着テープをその顔面、頭部、両手首、両足首及び膝のあたり等に幾重にも巻き付けた上、普通乗用自動車の後部トランク内に押し込むというもの(神戸地裁判決 昭和56年12月21日)
- ヨットスクールのコーチが、ヨットスクールの校長ら多数と共謀の上、14歳の少年に対し、顔面等を殴打する等してB県内の居宅から引きずり出して普通乗用自動車の後部座席に押し込み、同車を疾走させ、車内で同人の両手首に手錠をかけ、これをロープで同車ドア上部に緊縛し、同人の腹部を手拳で数回殴打するなどしながら、丸1日かかり愛知県内のヨットスクール合宿所まで連行し、そこで、同人を格子戸付き押入内に入れて施錠し、以後、同合宿所内及びその周辺等において、終始同人を監視するなどして、約1か月半後に同人が同合宿所から脱出するまでの間、同人の自由を不法に拘束するというもの(名古屋地裁判決 昭和60年2月18日)
- 3名で都内の中学校の1階主事室に侵入し、所携のガムテープ、ナイロン製紐及び布製ベルトで主事の身体を同室内にあった椅子に緊縛したうえ、1階便所内に連行し、交替で同便所入口前で見張りをし、午前1時過ぎころから午前5時ころまでの間、主事をして同便所から脱出することを不能ならしめるというもの(東京地裁判決 昭和63年7月7日)
- 当時22歳の男性の逃走を防ぎ、その性格を矯正するためとして、同人を学園内の小屋(床面積約13平方メートルの平屋建倉庫)に入れて両手錠をした上、足に鎖をつけ、さらに同小屋に施錠し、2日目くらいから1日1回、後には2回、麦茶と梅千しあるいは少量のパン、サラダ、後にはスイカ、ジュース等を与え、2時間くらい園長または園長から命じられた他の入園生らの監視のもとに小屋の外に出すほかは、引き続き約9日間、前記男性を前記小屋に閉じ込めて脱出できないようにして不法に監禁し、よって同人に対し入院加療43日間を要する脱水症、急性腎不全、肺水腫による呼吸不全等の傷害を負わせるというもの(広島地裁福山支部 平成7年5月17日)
- オウム真理教の教団施設から自宅に帰宅することを希望する23歳の女性に対し、教団治療省所属医師である被告人が、同省看護婦ら多数の者と順次共謀の上、同女を教団施設に監禁しようと企て、平成6年12月27日から平成7年1月15日までの間、第6サティアンにおいて、信徒らが同女の手足を押さえ付けるとともに、被告人が同女の後頭部を押さえ付けて無理矢理全身麻酔薬の注射用チオペンタールナトリウムの溶解液を投与して意識障害状態に陥らせ、信徒らが同女を個室に閉じ込め、外から施錠して監視するなどし、引き続き同月15日ころから同年3月21日までの間、信徒らが同女を2個のトラック用コンテナを連結させた施設内の独房と称する個室に閉じ込め、外から施錠して監視するなどし、同月21日から同月22日までの間、信徒らが同女を第10サティアンに移して監視するなどして監禁するというもの(東京地裁判決 平成10年5月26日)
- 2月6日午後10時ころ被告人方で、当時23歳の男性に対し、身体をベッドに押し倒し、顔面を数回殴打するなどの暴行を加えて、その両手首に手錠をかけ、両手首、両足首等をガムテープ等で緊縛し、その着衣を脱がせて浴室の浴槽内に座らせるなどして、翌7日午前5時30分ころまで、同人の身体を拘東して脱出不能な状態におき、さらに、同時刻にろ、前記緊縛状態にある同人を被告人方から連行して駐車中の普通乗用自動車のトランク内に押し込み、翌8日午後11時ころまで同車を走行させるなどして、同人を同車トランク内から脱出不能な状態におき、もって同人を逮捕監禁するというもの(福岡地裁判決 平成11年2月18日)
- 被告人ら数名で、被害女性2名をそれぞれその上半身を抱きかかえるなどして自動車内に押し込み、同車を発進させ、走行中又は停車中の同車内でそれぞれその両手足をガムテープ等で緊縛して同車内から脱出できない状態におくというもの(名古屋地裁判決 平成14年2月19日)
- 鎖針金及び縄等で手足を縛り奥座敷に運んで仰臥せしめ、その足を床柱に縛り付け、身体の両側に重さ10ないし15貫の籾俵数俵を立て掛け、その上に重さ34貫ほどの種俵数俵を積み乗せて身動きできないようにするというもの(大審院判決 大正9年2月16日)
- 被害者の全身を四布掛布団に巻き包み、その上よりわら、縄及び兵児帯で胴膝及び上胸部辺を縛り、更に麻縄でその両手首及び両足首を縛り、なお、その頭部に四布掛布団を覆いかぶせたまま放置するというもの(大審院判決 昭和11年4月18日)
- 兄弟である被告人両名が、統合失調症を患っていた妹である被害者を自宅に引き取って看病をするうち、同女の症状が悪化し、同女が暴れたりしたことからその対応に窮し、自宅で、同女の口をタオルでふさいで、その上からベルトを巻き付けて縛り、同女の両手首及び身体をゴムホースで縛って、その両足をベルトで絞めるなどし、その状態のまま風呂場に連れて行って浴槽内に押し込めて、同女の顔面にバスタオルを巻き付けて頭部にシャワーの水を掛け、さらに同女の頭部にポリバケツをかぶせたうえ、同女の身体に布団2枚をかぶせるなどして放置するというもの(神戸地裁判決 平成16年2月9日)