つじつまの合うストーリーがある話は、起こりやすいと勘違いされる
以下の①と②の文章を見て、どちらの方が起こる可能性が高いと感じますか?
① 10年以内に消費税率はさらに上がる
② 少子高齢化が深刻化し、今より国の税収が減って、支出が増えると、10年以内に消費税はさらに上がる
②の方が起こる確率が高いと感じた人は、勘違い(錯誤)に陥っています。
①が起こる確率の中に、②が起こる確率が入っているので、理論的には①が起こる確率の方が高いです。
にもかかわらず、②の方が起こる確率が高いと感じてしまうのは、①の文章に、
つじつまの合うストーリー
がついているからです。
つじつまの合うストーリーは、必ずしも起こりやすいわけではありませんが、話に「一貫性」があり、「もっともらしさ」があります。
人は、「一貫性」「もっともらしさ」を、『起こりやすさ(確率)』の観念と混同してしまうのです。
一貫性があること、もっともらしさがあることを、起こりやすさ(確率)に置き換えてしまったときに、人は、確率の勘違い(錯誤)を起こします。
これは、人の脳が、
- 整合性がとれているものを(一貫性があるもの)
- 因果関係づけができているもの(もっともらしさがあるもの)
を、正しいと認知する作りになっていることに起因します。
連言錯誤(れんげんさくご)とは?
以上のような、
- つじつまの合うストーリーがある
そして、ストーリーとして追加された情報に
- 一貫性と、もっともらしさがある
- 因果関係づけがうまくできている
- 整合性がとれている
- 詳しくて、具体的である
- 説得力がある
- 感情をゆさぶる要素がある
といった文章を、そうでない文章よりも、確率論に反して起こりやすいと勘違い(錯誤)することを、「連言錯誤」といいます。
詳しい情報をつけ加えれば、起きる確率は下がります。
しかし、詳しい情報がつけ加えられると、もっともらしいストーリーになるので、確率論に反し、起こりやすいと勘違いしてしまうのが、人間の脳なのです。
サイコロの例題
人には、「連言錯誤」という心理作用が働くことが分かったところで、以下の例題を見てみましょう。
正六面体サイコロがあります。
サイコロの6つの面は、赤・赤・青・青・青・青の色です(赤2、青4)。
それでは、サイコロを転がして出る面の色は、①と②のどちらのパターンが現れる確率が高いでしょうか?
① 青 赤 青 青 青(赤1、青4)
② 赤 青 赤 青 青 青(赤2、青4)
・・・
答えは、②のパターンの方が起きやすい…
と思った人は、連言錯誤にハマっています。
②は、①のパターンに先頭に「赤」をつけたパターンです。
②は、①が起こる確率の中に含まれているので、①が起こる確率の方が高いです。
図で説明すると以下のようになります。
人は、追加情報がもっともらしいと認めると、追加情報があるほうに心地良さを感じて、「追加情報がある方が正しい」と考えてしまいます。
連言錯誤を起こして、判断を誤ることがあることを、肝に銘じておく必要があります。
他人を自分の都合の良いように操りたいなら「連言錯誤」を使う
「連言錯誤」の発動条件は、つじつまの合うストーリーを相手に認識させることです。
つじつまの合うストーリーは、追加情報で作ります。
追加情報は、
- 一貫性と、もっともらしさがある
- 因果関係づけがうまくできている
- 整合性がとれている
- 詳しくて、具体的である
- 説得力がある
- 感情をゆさぶる要素がある
情報で構成します。
仕事や家庭など、人間関係において、自分有利の状況を確立するために、「連言錯誤」の画策は有効な手段になります。
たとえば、仕事において、自分の企画(ex 新作のビールを売りたい)を通したいときは、上司に対し、「連言錯誤」が起こるように、追加情報を与えてきます。
今回、新作ビールをヒットさせるために
- インターネットを使ってマーケティングをします
- 今やインターネット広告は2兆円を超える市場規模であり、テレビメディアの1兆8万円の市場規模を上回っています
- SNSを使い、ビールの製造過程などのストーリーも売っていきます
- 昨年は、当社でインターネットやSNSを使ってマーケティングをした商品は、36%も売り上げが伸びています
といった感じで、「この新作ビールは売れる商品である」という軸に、追加情報を加えていき、「この新作ビールは売れる」という、つじつまの合うストーリーをこしらえます。
上司が追加情報に納得すれば(連言錯誤を起こせば)、企画が通りやすくなります。