刑法(総論)

犯罪の種類 【結果犯・挙動犯】、【実質犯・形式犯】、【結合犯・結果的加重犯】、【即成犯・状態犯・継続犯】

「結果犯」と「挙動犯」

 犯罪は、犯罪の成立に、「犯罪の結果発生が必要なもの」と「必要でないもの」とで、「結果犯」と「挙動犯」に分けることができます。

結果犯

 結果犯とは、犯罪の結果発生を必要とする犯罪です。

 結果犯の場合、犯行に及んでも結果まで至らなければ犯罪は成立しません。

 たとえば、窃盗罪は結果犯です。

 コンビニのおにぎりを盗もうとして、おにぎりをつかんでも、そっと棚に戻せば窃盗罪は成立しません。

 おにぎりをお金を払わずに店の外に持ち出したときに、窃盗の結果が発生し、窃盗罪が成立します。

 ちなみに、刑法の大部分が結果犯です。

挙動犯

 挙動犯とは、犯罪の結果発生は必要なく、一定の行為が行われれば、犯罪が成立する犯罪です。

 「行動する」➡「即、犯罪成立」となる犯罪のことです。

 たとえば、住居侵入罪偽証罪不退去罪が挙動犯にあたります。

「実質犯」と「形式犯」

 犯罪は、犯罪の成立に、「加害行為(法益侵害)の発生が必要なもの」と「必要でないもの」とで、「実質犯」と「形式犯」に分けることができます。

実質犯

 実質犯とは、加害行為(法益侵害)の発生が必要な犯罪をいいます。

 さらに、実質犯は、

加害行為(法益侵害)が現実に発生することを必要とする「侵害犯」(殺人罪、窃盗罪など)

加害行為(法益侵害)の危険の発生があれば足りる「危険犯」(放火罪、通貨偽造罪など)

に分けることができます。

 さらに、危険犯は、

具体的な危険の発生を必要とする「具体的危険犯」(非現住建造物等放火罪建造物等以外放火罪ガス漏出等及び同致死傷罪など)

抽象的な危険の発生で足りる「抽象的危険犯」(現住建造物等放火罪私印偽造及び不正使用等罪遺棄罪など)

に分けることができます。

形式犯

 実質犯に対する概念として、形式犯があります。

 形式犯は、一定の行為をするだけで犯罪が成立し、加害行為(法益侵害)の発生が必要ない犯罪をいいます。

※ 自動車の無免許運転・速度違反・運転免許証不携帯など

「結合犯」と「結果的加重犯」

 複数の犯罪が組み合わさってできる犯罪があります。

 このような犯罪は、「結合犯」と「結果的加重犯(けっかてきかちょうははん)」に分けることができます。

結合犯

 結合犯とは、2つ以上の犯罪行為が合わさって、1つの犯罪を形成する犯罪をいいます。

 たとえば、強盗罪です。

 強盗罪は、暴行罪(または脅迫罪)と窃盗罪の2つの犯罪が結合されて、強盗罪という1つの犯罪を構成します。

 また、強盗強制性交罪も結合犯です。

 強盗罪と強制性交罪が結合して1つの犯罪を構成します。

結果的加重犯

 結果的加重犯とは、

一つの犯罪を実現した後に、犯人の予想しなかった重い犯罪結果が生じたときに、その重い犯罪結果について刑が科せられる犯罪

をいいます。

 結果的加重犯の代表例は、傷害致死罪です。

 相手をケガさせようと思って殴ったら(傷害罪)、結果的に殺してしまった(傷害致死罪)という犯罪です。

「即成犯」・「状態犯」・「継続犯」

 犯罪は、加害行為(法益侵害)の発生と終了時期との関係によって、「既成犯(そくせいはん)」、「状態犯」、「継続犯」に分けることができます。

既成犯

 既成犯は、

犯罪の結果発生と同時に、犯罪が成立し(既遂に達し)、加害行為(法益侵害)も終了する犯罪

をいいます。

 たとえば、殺人罪です。

 人を殺すという結果発生と同時に、犯罪が成立し、殺人行為は終了します。

状態犯

 状態犯は、

犯罪の結果発生と同時に、犯罪は完了するが(既遂に達するが)、侵害行為の状態が続く犯罪

をいいます。

 たとえば、窃盗罪です。

 窃盗行為によって、窃盗罪は完了しますが、物を盗まれて手元にないという侵害行為の状態は続きます。

 たとえば、財布を盗まれた人は、ずっと財布がなくて困った状態が続きます。 

継続犯

 継続犯とは、

犯罪の結果発生と同時に、犯罪は成立するが(既遂に達するが)、加害行為が継続する犯罪

をいいます。

 たとえば、監禁罪です。

 犯人の家に連れ込まれて、監禁された時点で監禁罪は成立します。

 その後も解放されるまで、ずっと監禁(加害行為)が継続します。

 継続犯は、加害行為が継続する間は、

という特徴があります。

まとめ

 犯罪は、

① 犯罪の成立に、犯罪の結果発生が必要か、必要でないかで

 「結果犯」と「挙動犯」

に分けることができます。

② 犯罪の成立に、加害行為(法益侵害)の発生が必要か、必要でないかで

 「実質犯」と「形式犯」

に分けることができます。

③ 複数の犯罪が組み合わさってできる犯罪として

 「結合犯」と「結果的加重犯」

があります。

④ 加害行為(法益侵害)の発生と終了時期との関係によって

 「即成犯」と「状態犯」と「継続犯」

に分けることができます。

 上記のように、犯罪はカテゴリー化して考えることができます。

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