これから8回にわたり、道路交通法違反(速度違反)を説明します。
道路交通法違反(速度違反)とは?
道路交通法違反(速度違反)は、道交法22条において、
第1項 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない
第2項 路面電車又はトロリーバスは、軌道法第14条(同法第31条において準用する場合を含む。第62条において同じ。)の規定に基づく命令で定める最高速度をこえない範囲内で道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては当該命令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない
と規定されます。
罰則
罰則は、道交法118条1項1号において、
6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する
と規定されます。
道路交通法違反(速度違反)は過失犯の罰則規定もあり、道交法118条3項において、
過失により第1項第1号の罪を犯した者は、3月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する
と規定されます。
車両の最高速度(道交法22条1項)の説明
道交法22条1項は、車両の最高速度遵守義務について規定したものです。
「最高速度」は、
- 道路標識等により指定される「指定最高速度」
- 政令で定められる「法定最高速度」
の2種類に分けられます。
「道路標識等によりその最高速度が指定されている」とは?
1⃣ 道交法22条1項の「道路標識等によりその最高速度が指定されている」とは、
公安委員会が道交法4条の規定に基づき、道交法22条1項の道路標識等を設置して、その最高速度が指定されているとき
という意味です。
つまり、最高速度が、法定速度ではなく、指定速度で指定されているときです。
警察署長も道交法22条1項に規定する最高速度の指定をすることができますが、適用期間が1か月を超えないものに限られます。
2⃣ 「道路標識等」とは、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令に定める
をいいます。
「最高速度」(323、105)の表示する意味は、
① 「原動機付自転車」及び「他の車両を牽引している自動車」の最高速度につき、法定最高速度(一般道60キロ、高速道100キロ)以下の速度とする場合におけるその最高速度を指定すること
② 「緊急自動車」の最高速度につき、法定最高速度(一般道60キロ、高速道100キロ)以上の速度とする場合におけるその最高速度を指定すること
③ 「①及び②以外の車両」及び「路面電車」の最高速度を指定すること
です。
最高速度の道路標識を設置しても、その効力が及ぶのは、
- ①の車の場合は当該車両に係る法定最高速度以下の速度とする場合のみ
- ②の車の場合は当該車両に係る法定最高速度以上の速度とする場合のみ
となり、これに該当しない場合は、①②の車は自らの法定最高速度によって走行することとなります。
「特定の種類の車両の最高速度」(323の2)の表示する意味は、
道交法22条の道路標識により車両の種類を特定(補助標識併用)して最高速度を指定するもの
です。
「最高速度が指定されている道路において」とは?
道交法22条1項は、法定最高速度に関係なく、それ以下でもそれ以上でも指定することができます。
【理由】
道交法22条2項が「…最高速度をこえない範囲内で…」と規定しているのに対し、道交法22条1項は「…最高速度が指定されている道路…」と規定し、道交法22条2項のように「…最高速度をこえない範囲内で…」という条件が付されていません。
そのため、 道交法22条1項は、法定最高速度に関係なく、法定最高速度以下でもそれ以上でも指定することができるものです。
「その他の道路においては政令で定める最高速度」とは?
道交法22条1項の「その他の道路においては政令で定める最高速度」とは、
道路標識等によりその最高速度が指定されている道路以外の道路においては、政令で定める最高速度による
という意味です。
【政令で定める最高速度とは?】
「政令で定める最高速度」は、道交通施行令11条、12条、27条に定められています。
1⃣ 道交通施行令11条
11条は、「自動車」及び「原動機付自転車」が一般道を通行する場合の法定最高速度を定めたものです。
11条は、
- 「自動車」の最高速度については60キロメートル毎時
- 「原動機付自転車」の最高速度については30キロメートル毎時
と規定しています。
なお、11条の意義をもう少し具体的にいうと、
「自動車」及び「原動機付自転車」が、高速自動車国道の本線車道(構造上往復の方向別に分離されていないものを除く(道交法施行令27条の2)。12条、27条において同じ。)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度を定めたもの
となります。
なお、自動車専用道路(首都高など)の法定最高速度は、11条に定めるところによることになり、それでは自動車専用道路としての特性が害されるのではないかと危惧する向きがありますが、必要によっては公安委員会がその専用道路に法定速度より高い速度を指定することによって解決されることになります。
2⃣ 道交通施行令12条
12条は、
- 他の車両を牽引して道路を通行する場合の最高速度
及び
- 緊急自動車の最高速度の特例
について定めたものです。
12条の内容は以下①~③のとおりです。
① 自動車(道交法施行規則5条の3で定める総排気量025リットル、定格出力1.00キロワット以下の普通自動ニ輪車を除く。)が他の車両を牽引して道路を通行する場合(牽引するための構造及び装置を有する自動車によって牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引する場合を除く。)の最高速度は以下⑴、⑵による。
⑴ 車両総重量が2000キログラム以下の車両をその車両の車両総重量の3倍以上の車両総重量の自動車で牽引する場合(以下「牽引①」という)
→ 40キロメートル毎時
ここに「車両総重量」とは、車両重量、最大積載量及び55キログラムに乗車定員を乗じて得た重量の総和をいう(道路運送車両法40条3号)。
⑵ 牽引①以外の場合(以下「牽引②」という)
→ 30キロメートル毎時
② 普通自動二輪車(上記①に掲げる原動機の大きさ以下のもの)又は原動機付自転車が他の車両を牽引して道路を通行する場合(以下「牽引③」という)の最高速度
→ 25キロメートル毎時
③ 緊急自動車が、高速自動車国道の本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度
→ 80キロメートル毎時
3⃣ 道交通施行令27条
27条の内容は、以下①②のとおりです。
① 自動車が、高速自動車国道の本線車道又はこれに接する加速車線若しくは減速車線を通行する場合の最高速度は、以下⑴⑵のとおりである。
⑴ 次に掲げる自動車
→ 100キロメートル毎時
- 大型自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)のうち、専ら人を運搬する構造のもの
- 中型自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)のうち、専ら人を運搬する構造のもの又は車両総重量が8000キログラム未満、最大積載重量が5000キログラム未満及び乗車定員が10人以下のもの
- 準中型自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)
- 普通自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)
- 大型自動二輪車
- 普通自動二輪車
⑵ ①に掲げる自動車以外の自動車
→ 80キロメートル毎時
② 緊急自動車が、高速自動車国道の本線車道又はこれに接する加速車線若しくは減速車線を通行する場合の最高速度
→ 100キロメートル毎時
「こえる速度で進行してはならない」とは?
道交法22条1項の「こえる速度で進行してはならない」とは、
指定最高速度、又は法定最高速度を超える速度で走行してはならない
という意味です。
「最高速度」とは、道路運送車両の保安基準(以下「保安基準」という)にいう最高速度と異なり、その車両が物理的に出しうる最高の速度ではなく、
- 法規のもとで許容される最高の速度のこと
であり、その速度は平均速度をいうのではなく、
- 走行中における瞬間速度のこと
をいいます。
したがって、車両等の運転者が追越し等のため瞬間的に最高速度を超える速度で走行した場合も最高速度の遵守義務違反となり、道路交通法違反(速度違反)が成立します。