道路交通法違反

酒気帯び・酒酔い運転(1)~「道交法65条1項の『酒気帯び運転』と『酒酔い運転』の区別」「処罰対象車両」を説明

 これから11回にわたり、

を説明します。

飲酒運転の禁止規定(道交法65条1項)

 道路交通法違反(酒気帯び運転)及び(酒酔い運転)の禁止規定は道交法65条1項にあり、

  • 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない

と規定されます。

 道交法65条1項は、酒気を帯びて車両等を運転することを全面的に禁止したものです。

「何人も」とは?

 「何人(なんぴと)も」とは、「だれでも」という意味です。

 「何人も」とは、法令上は、国籍、性別、年齢を問わず、日本国の統治権の対象となる全ての者をあらわす場合に用いられる用語です。

「酒気を帯びて」とは?

 「酒気」とは、アルコール分を指します。

 それが

  • 酒、ビール、ウイスキー等のアルコール飲料に含まれているもの
  • アルコールそのもの
  • 飲料以外の薬品等に含まれているもの

であるとを問いません。

 「酒気を帯びて」とは、

社会通念上、酒気帯びといわれる状態

をいい、

外観上(顔色、呼気等)認知できる状態にあること

をいうものと解されています。

 したがって、酒に酔った状態であることは必要でないし、また、運転の影響が外観上認知できることも必要ではありません。

「車両等を運転してはならない」とは?

 「車両等を運転してはならない」とは、

酒気を帯びて車両等を運転することを禁止する

という意味です。

 この禁止に違反した場合、その違反が、

酒気帯びでの運転だった場合は、道路交通法違反(酒気帯び運転)(道交法117条の2の2第3号

が成立し、

酒酔いでの運転だった場合は、道路交通法違反(酒酔い運転)(道交法117条の2第1号

が成立します。

「車両等」とは?(処罰対象車両)

1⃣ 「車両等を運転してはならない」の「車両等」とは、

  1. 自動車道交法2条1項9号
  2. 原動機付自転車道交法2条1項10号
  3. 軽車両道交法2条1項11号
  4. トローリーバス道交法2条1項12号
  5. 路面電車道交法2条1項13号

をいいます。

 ただし、飲酒運転をして罰則が科される対象車両は、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」とで異なります。

 「酒酔い運転」は、道交法117条の2第1項1号により、条文で「車両等」が処罰対象となっており、つまり、上記①~⑤の車両全てが該当し、対象車両は、

①自動車、②原動機付自転車、③軽車両、④トローリーバス、⑤路面電車

となります。

 「酒気帯び運転」は、道交法117条の2の2第1項3号により、条文で「車両等(自転車以外の軽車両を除く)」が処罰対象となっており、つまり、上記①~⑤の車両から自転車以外の軽車両が除かれるので、対象車両は、

①自動車、②原動機付自転車、③自転車、④トローリーバス、⑤路面電車

となります。

2⃣ なお、上記処罰対象車両のルールは、「酒酔い運転」「酒気帯び運転」のほか、飲酒運転に関する罪である

にも同様のルールが当てはまっています。

 つまり、端的にいうと、

  • 酒酔いに関する違反(酒酔い運転、酒気帯び、車両提供罪、酒類提供罪、飲酒運手同乗罪) → 処罰対象車両は「全車両」
  • 酒気帯びに関する違反(酒酔い運転、酒気帯び、車両提供罪、酒類提供罪、飲酒運手同乗罪)→ 処罰対象車両は「全車両」から自転車以外の軽車両を除く

となります。

「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の区別

1⃣ 「酒気帯び運転」は、飲酒運転をして、身体に保有するアルコールが道路交通法施行令44条の3に規定された数値である

  • 血中アルコール濃度0.3mg/ml以上

    又は

  • 呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上

であった場合に成立します(道交法117条の2の2第3号)。

2⃣ 「酒酔い運転」は、飲酒運転をして、

  • アルコールの影響により正常な運転が運転ができない状態にあった場合

に成立します(道交法117条の2第1号)。

 「アルコールの影響により正常な運転が運転ができない状態」であれば、身体に保有するアルコールが酒気帯び運転の上記数値を下回ったとしても成立します。

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