道路交通法違反

道交法違反(事故報告義務違反)(12)~「救護措置義務違反と事故報告義務違反の罪数は観念的競合になる」を説明

 前回の記事の続きです。

救護措置義務違反と事故報告義務違反の罪数は観念的競合になる

 道交法72条1項前段の道交法違反(救護措置義務違反)と道交法72条1項後段の道交法違反(事故報告義務違反)の罪数は、観念的競合になります。

 この点を判示したのが以下の判例です。

最高裁判決(昭和51年9月22日)

 車両等の運転者等が、一個の交通事故から生じた道路交通法72条1項前段、後段の各義務を負う場合、これをいずれも履行する意思がなく、事故現場から立ち去るなどしたときは、他に特段の事情がない限り、右各義務違反の罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるとした判決です。

 裁判所は、

  • 刑法第54条1項前段にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいい(昭和49年5月29日最高裁大法廷判決引用661頁参照)、不作為もここにいう動態に含まれる
  • 道路交通法第72条1項前段、後段の義務及びこれらの義務に違反する不作為についてみると、右の二つの義務に違反して逃げ去るなどした場合は、社会生活上、しばしばひき逃げというひとつの社会的出来ごととして認められている
  • 右大法廷判決のいわゆる自然的観察、社会的見解のもとでは、このような場合において右各義務違反の不作為を別個の行為であるとすることは、格別の事情がないかぎり、是認しがたい見方であるというべきである
  • したがって、車両等の運転者等が一個の交通事故から生じた右各義務を負う場合、これをいずれも履行する意思がなく、事故現場から立ち去るなどしたときは、他に特段の事情がないかぎり、右各義務違反の不作為は、社会的見解上一個の動態と評価すべきものであり、右各
  • 義務違反の罪は、刑法第54条1項前段の観念的競合の関係にあるものと解するのが相当である

と判示しました。

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