刑法(偽計業務妨害罪)

偽計業務妨害罪(13) ~「偽計業務妨害罪の罪数」を説明~

 前回の記事の続きです。

偽計業務妨害罪の罪数

1⃣ 業務妨害罪(刑法233条前段刑法234条)において、1個の行為で多数人の業務を妨害した場合には、被害を受けた業務の数に応じた業務妨害罪が成立し、各業務妨害罪は観念的競合となります。

 参考となる以下の判例があります。

大審院判決(昭和9年5月12日)

 A販売業者が不良品を販売することを適示する内容のA販売業者を誹謗する文書を、A販売業者の取引先の業者C、Dに送付し、偽計を用いてC、Dの業務を妨害した偽計業務妨害(刑法233条前段)の事案で、1個の行為で2人の業務を妨害したとして刑法54条1項前段観念的競合)を適用しました。

2⃣ 虚偽の風説を繰り返して流布し1人の業務を妨害する場合(虚偽風説の流布による業務妨害罪(刑法233条前段))は、通常は単純一罪とみるべきとされます。

 この点を判示したのが以下の判例です。

大審院判決(明治44年12月25日)

 裁判所は、

  • 刑法第233条にいわゆる流布とは、多数の人に伝播する行為をいうものなれば、虚偽の風説を欺罔反復して数人に伝え、よって他人の業務を妨害するも、単純なる1個の業務妨害罪を構成するものにして連続する数個の犯行なりと為すを得ず

と判示しました。

 ただし、態様によっては、包括一罪あるいは併合罪となることもあり得えます。

3⃣ 虚偽風説の流布と偽計使用の両手段によって、1人の業務を妨害した場合については、単純一罪とみるべきとされます。

次の記事へ

偽計業務妨害罪の記事一覧