刑法(遺棄致死傷罪、保護責任者遺棄致死傷罪)

遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪(1) ~「遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪とは?」「法定刑」を説明~

 これから3回にわたり、遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪(刑法219条)を説明します。

遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪とは?

 遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪は、刑法219条に規定があり、

前二条(刑法217条刑法218条)の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する

と規定します、

 遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪は、単純遺棄罪(刑法217条)又は保護責任者遺棄罪(刑法218条)を犯し、その結果として被遺棄者を死傷させる罪であって、結果的加重犯です。

法定刑

 遺棄致死傷罪・保護責任者遺棄致死傷罪(刑法219条)の法定刑は、

傷害の罪と比較して、重い刑により処断する

と規定されます。

 これを読み解くと、法定刑は以下のようになります。

1⃣ 遺棄致傷罪(刑法219条)の法定刑は、「15年以下の懲役」となります。

  1. 遺棄罪(刑法217条)の法定刑は、1年以下の懲役です。
  2. 傷害罪(刑法204条)の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

 ①、②の法定刑で「15年以下の懲役」が最も重い刑なので、「15年以下の懲役」が法定刑となります。

2⃣ 保護責任者遺棄致傷(刑法219条)の法定刑は、「3月以上15年以下の懲役」となります。

  1. 保護責任者遺棄罪(刑法218条)の法定刑は、「3月以上5年以下」の懲役です。
  2. 傷害罪(刑法204条)の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

 ①、②の法定刑で、下限の最大は「3月以上の懲役」、上限は「15年以下の懲役」なので、「3月以上15年以下の懲役」が法定刑となります。

3⃣ 遺棄致死罪・保護責任者遺棄致死罪の法定刑は、「3年以上の20年以下の懲役」となります。

  1. 遺棄罪(刑法217条)の法定刑は、1年以下の懲役です。
  2. 保護責任者遺棄罪(刑法218条)の法定刑は、「3月以上5年以下」の懲役です。
  3. 傷害致死罪(刑法205条)の法定刑は、「3年以上の有期懲役」であり、有期懲役の上限は、刑法12条1項により、「20年以下」と定められているので、法定刑は、「3年以上の20年以下の懲役」となります。

 ①、②、③の法定刑で、下限の最大は「3年以上の懲役」、上限は「20年以下の懲役の懲役」なので、「3年以上の20年以下の懲役」が法定刑となります。

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