刑法(名誉毀損罪)

名誉毀損罪(1) ~「名誉毀損罪とは?」「名誉毀損罪の主体(犯人)」を説明~

 これから27回にわたり、名誉毀損罪(刑法230条)の記事を書きます。

名誉毀損罪とは?

 名誉毀損罪(刑法230条)は、

  • 第1項で、人の名誉を保護するため、公然と事実を摘示して人の名誉を害する行為について、その事実の真偽を問わず処罰することとし
  • 第2項で、同様の方法で死者の名誉を害する行為については、その事実が虚偽であり、かつ、行為者がそのことを確定的に知っている場合に限って処罰することを定めたもの

です。

 名誉毀損罪は親告罪刑法232条)なので、告訴がなければ公訴を提起できません(詳しくは別の記事で説明)。

 名誉毀損罪は、日本国民が国外で犯した場合にも適用があります(刑法3条13号)。

名誉毀損罪の主体(犯人)

 名誉毀損罪の行為主体(犯人)には、特別の制限はありません。

 自然人であれば、誰でも主体(犯人)たり得ます。

 法人は名誉毀損罪の主体(犯人)にならないと解されます。

 名誉毀損罪が、報道・出版といった手段で行われる場合、実質的には法人そのものをその主体(犯人)とみるべきといえそうですが、刑法の犯罪は、法人の処罰を認める条文がないことからも、法人は名誉毀損罪の主体(犯人)にならないといえます。

 法人が名誉毀損罪の主体(犯人)にならないことを判示した以下の判例があります。

大審院判決(昭和5年6月25日)

 A会社が、他の会社間の民事訴訟について、被告会社を補助するため参加するにあたり、取締役社長が、第三者の名誉を害する虚偽の事実を弁護士に告げ、弁護士をして、公判廷で同趣旨の陳述をさせた事例です。

 裁判官は、法人の犯罪能力を否定する立場から、

  • 法人の代表者が、法人の業務執行上、他人の名誉を毀損する行為ありたりとするも、かかる場合に法人を処罰すべき特別の規定存せざるをもって、法人は処罰せらるべきものにあらずして犯罪能力ある当該行為者において処罰を免れざるものとす

と判示しました。

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