刑法(証人威迫罪)

証人威迫罪(4) ~「証人威迫罪における『知識を有すると認められる者』『その親族』とは?」を説明~

 前回の記事の続きです。

証人威迫罪における「知識を有すると認められる者」とは?

 証人威迫罪は、刑法105条の2に規定があり、

自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 証人威迫罪の客体は、「自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族」です。

 この記事では、証人威迫罪の客体における

  1. 知識を有すると認められる者」の意義
  2. その親族」の意義

について説明します。

①「知識を有すると認められる者」とは?

 「知識を有すると認められる者」とは、

当該「刑事事件」との関係において客観的な諸般の状況から合理的に判断して、「知識」を有すると認められる者であることを要し、かつ、それで足りる

と解されています(通説)。

 したがって、

証人威迫罪の行為時において、その客体(被害者)が現実に「知識」を保有していることを要せず、客観的にみて、「知識」の保有者たる外観を呈していれば足りる

となります。

 例えば、

  • 証人威迫罪の行為時には「知識」について記憶を失っていたが、以前には「知識」を有していて、参考人・証人として証言・供述をしたことがある者
  • 現実には犯行を目撃しなかったが、客観的な状況からみて目撃したであろうとみられる者

などは、証人威迫罪の客体となります。

犯人が相手を「知識を有すると認められる者」と誤認した場合の証人威迫罪の成否

 「認められる者」の判断につき、第一次的には上記通説の基準によるとしても、第二次的には、証人威迫罪の行為者(犯人)の主観を基準にすべきであるから、証人威迫罪の行為者が行為の相手方を「認められる者」と誤信していた場合をも含むとする少数説があります。

 この少数説に対しては、

  • 「認められる者」という客観的な構成要件要素の有無を行為者の主観に係らしめること自体に問題がある
  • 刑事司法の運営若しくは証人・参考人等の自由等を保護しようとする証拠隠滅罪の趣旨に照らしても、証拠たり得る知識を有していないことが明白であって、証人・参考人等になる可能性が全くない者に対する面会強請・強談威迫の行為を処罰する必要性はない

とする反対意見があります。

 犯人が相手を「知識を有すると認められる者」と誤認し、威迫行為を行った場合、証人威迫罪は、不能犯として不処罰とすべきとする見解があります。

②「その親族」とは?

 証人威迫罪(刑法105条の2)における「知識を有すると認められる者又はその親族」のと「その親族」の意義について説明します。

「親族」とは、

民法上の親族

をいいます。

 日本国籍を有する者については、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が親族となります(民法725条)。

 日本国籍を有しない者については、親族関係は本人の本国法によって定まります(法の適用に関する通則法33条)。

 証人威迫罪所定の者の親族ではないのに、親族と誤信して証人威迫行為に及んだ場合には、証人威迫罪を構成しません。

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