前回の記事の続きです。
「面会強請」は相手の面前で直接なされることを要し、「強談威迫」は手紙・電話等で間接的になされる場合を含む
証人威迫罪(刑法105条の2)の行為は、
当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をなすこと
です。
「面会強請」「強談威迫」について、これらの行為が
- 相手の面前若しくは近辺で直接的になされることを要するか
- それとも手紙・電話等により間接的になされる場合をも含むか
という問題があります。
この問題の結論は以下のとおりです。
「面会強請」については、
その文言自体の意味のほか、証人威迫罪の法益を侵害する危険の程度が、「強談威迫」に比べてより間接的であり、強談威迫の準備的行為ともいえるから、相手方に出向いてその近辺で面会を要求するという積極的かつ直接的行為に限られるということはいえる
とされます。
「強談威迫」については、
「威迫」とは、「言語」又は「動作」をもって気勢を示し、相手に不安・困惑の念を抱かせることからすれば、「強談威迫」について、文書・電話等の間接的方法を除外する理由はなく、文書・電話等による威迫はしばしば行われるところであり、これらの手段を用いて相手に不安・困惑の念を抱かせることは、刑事司法の適正な運営を阻害し、あるいは、証人等の意思の自由を侵害する危険を生ずるものといえるため、「強談威迫」については、間接的な方法による場合をも含む
と解されます。
裁判例についてこれをみると、「面会強請」につき、
- 直接その相手に対し、言語・挙動等を示して強いて面会を求める場合をいい、電話・文書・使者等により間接的に面会を求める場合までを含まないとするもの(長崎地裁判決 昭和37年12月6日)
- 「面会強請」の社会的意義、証人威迫罪の趣旨の一つは本条所定の者の個人的平穏の保護であること、証人威迫罪の趣旨・目的に照らすと、「面会強請」の方法は直接相手の住居・事務所等において行われることを要すると解すべきであるとするもの(福岡高裁判決 昭和38年7月15日)
があります。
「強談威迫」については、
- 電話の方法によるもの(鹿児島地裁判決 昭和38年7月18日)
- 手紙によるもの(最高裁決定 平成19年11月13日)
が「威迫」に当たるとした判例があります。
この最高裁決定(平成19年11月13日)は、証人威迫罪の「威迫」について、
- 不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない
と判示しているので、少なくとも「威迫」については、間接的な方法による場合も含むことが判例上明らかになっています。