裁判員制度とは?
裁判員制度は、
国民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する制度
です。
裁判員は、法廷で行われる審理に立ち会い、裁判官とともに被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にするのかを判断します。
裁判員制度は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(通称:裁判員法)に基づき、平成21年5月21日から実施されました。
裁判員制度が適用される裁判を「裁判員裁判」といいます。
裁判員制度の設立趣旨
裁判員制度は、国民が裁判に参加し、国民の感覚が裁判の内容に反映されるようにすることによって、司法に対する国民の理解や信頼を深め、司法がより強固な民主的基盤を得られるようにすることを目的として設けられました。
裁判員裁判の対象事件
裁判員裁判の対象となる事件は、裁判員法2条に規定があり、
- 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(裁判員法2条1項1号)
- 裁判所法26条2項2号に掲げる事件であって、故意の犯罪により被害者を死亡させた罪に係るもののうち、①に該当するものを除いたもの(裁判員法2条1項2号)
と定められています。
具体的には、
- 現住建造物等放火罪(刑法108条)
- 通貨偽造、偽造通貨行使罪(刑法148条)
- 不同意わいせつ致死傷罪(刑法181条)
- 不同意性交等致死傷罪(刑法181条)
- 監護者わいせつ致死傷罪(刑法179条)
- 監護者性交等致死傷罪(刑法179条)
- 殺人罪(刑法199条)
- 身代金目的略取等罪(刑法255条の2)
- 強盗致傷罪(刑法240条)
- 強盗致死罪(刑法240条)
- 強盗殺人(刑法240条)
- 強盗・不同意性交等罪(刑法241条)
- 強盗・不同意性交等致死罪(刑法241条)
- 傷害致死罪(刑法205条)
- 遺棄等致死罪(刑法219条)
- 逮捕等致死罪(刑法221条)
- 危険運転致死罪
- 麻薬特例法違反(覚醒剤などの薬物の密売、密輸入)
が該当事件になります。
裁判員裁判の対象事件の罪名であれば、裁判員裁判になります。
被告人に裁判員裁判を受けるか否かの選択権はありません(最高裁決定平成24年1月13日)。
ただし、以下の①又は②の場合に、対象事件であっても、裁判員裁判ではない通常の裁判が行われます。
- 裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあり、裁判員としての職務の執行ができないなどの事情がある場合(裁判員法3条1項)
- 審判期間が著しく長期又は公判期日が著しく多数で、裁判員の選任が困難であると認められる場合(裁判員法3条の2第1項1号・2号)
裁判員裁判の構成員
裁判員裁判の構成は、原則として、
- 裁判官3人
- 裁判員6人
で構成され、裁判官のうち1人を裁判長となります(裁判員法2条2項本文)。
ただし、裁判所は、以下①~③の条件を満たす場合は、
- 裁判官1人
- 裁判員4人
の構成で裁判員裁判を行うことができます(裁判員法2条2項ただし書き、2条3項・4項)。
- 対象事件について、公判前整理手続による争点及ひ証拠の整理において、公訴事実について争いがないと認められること
- 検察官、被告人及び弁護人に異議がないこと
- 事件の内容その他の事情を考慮して裁判所が適当と認めること
裁判官と裁判員の権限
裁判員裁判において、裁判官と裁判員の権限(判断できる事項)は、以下のとおり定められています。
裁判官が判断する事項
以下①、②の事項については、裁判官が判断し、裁判員に判断権限はありません(裁判員法6条2項1号・2号)。
- 法令の解釈についての判断
- 訴訟手続に関する判断(少年法55条の決定「少年を家庭裁判所に移送する判断」を除く。)
裁判官と裁判員が判断する事項
以下①~③の事項については、裁判官と裁判員の両方に判断権限があります(裁判員法6条1項)。
- 犯罪事実の認定
- 法令の適用(認定した犯罪事実に何の法令を適用するか)
- 刑の量定(懲役10年など、どのくらいの重さの刑を科すか)
裁判員の職務と義務
裁判員の職務と義務を規定した条文として、以下のものがあります。
- 裁判員は、独立してその職権を行う(裁判員法8条)
- 裁判員は、その職務を行うに当たっては、法令に従い公平誠実に行わなければならない(裁判員法9条1項)
- 裁判員は、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない(裁判員法9条2項)
- 裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない(裁判員法9条3項)
- 裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない(裁判員法9条4項)
裁判員を保護する措置
裁判員を保護する措置が裁判員法で定められてます。
① 不利益取扱いの禁止
- 労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと
- 裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったこと
を理由として、裁判員に対し、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません(裁判員法100条)。
② 裁判員を特定する情報を公にしてはならない
何人も、裁判員、補充判員、選任予定我判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはなりません(裁判員法101条1項)。
③ 裁判員に対する接触の制限
何人も、事件に関し、事件を取り扱う裁判所に選任され、又は選任された裁判員若しくは補充裁判員又は選任予定裁判員に接触してはなりません(裁判員法102条1項)。
次回の記事に続く
次回の記事では、「裁判員の選任手続」「被害者特定事項の秘匿のルール」を説明します。